デ・ニーロにシャーリーズ・セロン、クリス・プラット…肉体改造で見せたスターたちの“役者魂”
『レインマン』(88)でアカデミー賞監督賞に輝いた名匠バリー・レヴィンソン監督が、アウシュヴィッツから生還した男の衝撃的な実話を映画化した『アウシュヴィッツの生還者』(8月11日公開)。本作で主人公のハリー・ハフト役を演じたベン・フォスターは、アウシュヴィッツに収容されていた時代と終戦後、そして60年代と、3つの時代を演じるために減量と増量を繰り返すなど驚異的な役づくりに挑んだ。そこで本稿では、これまでも多くの俳優たちが歩んできた“異次元の肉体改造”の系譜をたどりながら、本作の見どころを探っていこう。
1949年。ナチスドイツの強制収容所から生還したハリー・ハフトは、アメリカでボクサーとして活躍しながら生き別れになった恋人レアを探していた。自らの安否を知らせるために取材を受けたハリーは、「自分が生き延びたのはナチス主催の賭けボクシングで、同胞のユダヤ人たちに勝ち続けたから」と壮絶な過去を告白。やがてレアを見つけられないままハリーはボクサーを引退。そして14年の月日が流れ、別の女性と新たな人生を送っていたハリーのもとに、レアが生きているという報せが届く。
役によって変幻自在!ガリガリから肥満までこなす演技派スター
役になりきるために体重をコントロールしたり、見た目を大きく変えたりといった極限の役づくり。それに挑んだ俳優といえば、やはりロバート・デ・ニーロが代表格だ。『レイジング・ブル』(80)で実在のプロボクサー、ジェイク・ラモッタ役を演じるために見事なボクサー体型を作り上げ、引退後のシーンを演じるためにそこから25キロも増量。ほかの作品でも徹底した役作りに挑み、いまでは “デ・ニーロ・アプローチ”と称されるほど。
そんな役者魂を受け継ぐように、多くの作品で実践しているのがクリスチャン・ベール。極度の不眠症で1年間眠れずにいる男を演じた『マシニスト』(04)では、4か月間毎日りんご1個とツナ缶1つのみで過ごし、運動も一切行なわずに痩せ細ったヒョロヒョロな肉体を完成させる。撮影のために減量した体重は約28キロ。身長182センチながら体重は55キロしかなかったという。
しかもその直後にベールは、『バットマン・ビギンズ』(05)でバットマン役を演じるために一気に体重を元に戻し、鍛え上げられた身体も作りあげる。さらに数年後には『ザ・ファイター』(10)で薬物中毒に陥る元ボクサーを演じるために再び体重を大幅に減らし、髪の毛も歯も抜き、全身全霊で役へアプローチ。同作で第83回アカデミー賞助演男優賞を受賞したベールは、その後『アメリカン・ハッスル』(13)で不健康な肥満体型になるなど、まさに変幻自在だ。