デ・ニーロにシャーリーズ・セロン、クリス・プラット…肉体改造で見せたスターたちの“役者魂”

コラム

デ・ニーロにシャーリーズ・セロン、クリス・プラット…肉体改造で見せたスターたちの“役者魂”

28キロ減らし、23キロ増やす!難役に挑む驚異の役者魂

アウシュヴィッツの生還者』で主人公を演じたフォスターといえば、本作を手掛けたレヴィンソン監督がメガホンをとった青春映画『リバティ・ハイツ』(99)で主人公の一人を演じて注目を集め、以後も『X-MEN:ファイナルディシジョン』(06)や『インフェルノ』(16)、『最後の追跡』(16)などで存在感を示してきた演技派俳優だ。

アウシュヴィッツを生き抜いた男の壮絶な実話に、ベン・フォスターの役者魂が信憑性を与える(『アウシュヴィッツの生還者』)
アウシュヴィッツを生き抜いた男の壮絶な実話に、ベン・フォスターの役者魂が信憑性を与える(『アウシュヴィッツの生還者』)[c] 2022 HEAVYWEIGHT HOLDINGS, LLC. ALL RIGHTS RESERVED. 

過去に主演を務めた『疑惑のチャンピオン』(15)で、ドーピングによって自転車競技界から追放されたランス・アームストロング役を演じたフォスター。その際、アームストロングの心情を徹底的に理解するため、撮影前にプロの自転車選手たちとツール・ド・フランスのコースを走るなど過酷なトレーニングを重ね、さらに医師の監督下で自らドーピングを試したという驚愕の役づくりに挑んだエピソードも有名だ。

本作ではナチスの収容所から生還した主人公の心身ともに過酷な状況を演じる必要があったようで、インタビューのなかでフォスターは「プロデューサーから、デジタル技術を使うことを打診されました。でも私は『そんなことをするつもりなら、役者を間違えている』と返事をしました。5か月もあれば、体重を減らすことができる。それをやらないのは無責任だ」と語っている。その言葉通り28キロの減量に成功したフォスターは、終戦後のシーンを演じるため、5週間で体重を約23キロ増量させたという。

『アウシュヴィッツの生還者』でベン・フォスターが“異次元の肉体改造”に挑む!
『アウシュヴィッツの生還者』でベン・フォスターが“異次元の肉体改造”に挑む![c] 2022 HEAVYWEIGHT HOLDINGS, LLC. ALL RIGHTS RESERVED. 

「だいたい7週間ぐらいで完全に戦える状態になりました。食事は栄養士やトレーナーの指導のもと、ビュッフェでたくさん食べる生活を続けていました(笑)」。もちろん劇中のボクシングシーンを撮影するために3か月間の過酷なトレーニングに励み、ボクサー役に必要な食事制限やフィジカルトレーニングも並行。さらにはポーランドなまりも習得したとか。

「戦える状態になりました」体重の急激な増減で3つの時代を演じ切ったベン・フォスター(『アウシュヴィッツの生還者』)
「戦える状態になりました」体重の急激な増減で3つの時代を演じ切ったベン・フォスター(『アウシュヴィッツの生還者』)[c] 2022 HEAVYWEIGHT HOLDINGS, LLC. ALL RIGHTS RESERVED. 


肉体改造のみならずあらゆる面で役柄の心情に寄り添い、見事に難役を演じ抜いたフォスターの役者魂が、作品にさらなる信憑性を与えている。スクリーンから放たれる飽くなき役者魂に注目しながら、この衝撃的な実話と珠玉のヒューマンドラマを目に焼き付けてみてはいかがだろうか。

文/久保田 和馬

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