「ただ、いい作品を作りたい」ハリソン・フォードや監督らが“最後のインディ・ジョーンズ”に懸けた想いを語る
考古学者インディ・ジョーンズの冒険譚、『レイダース 失われたアーク《聖櫃》』(81)から42年。5作目にしてハリソン・フォードが演じるインディの“最後の作品”とされる『インディ・ジョーンズと運命のダイヤル』(公開中)は、フォードら出演者そして監督のジェームズ・マンゴールドにとって、ストーリーテラーとしての原点回帰と言えるような作品になっている。その理由は、フォードが演じるインディ博士の魅力的なキャラクター、考古学や神話などを巧みに取り込んだ物語、手に汗握るアクションシーンの臨場感などをふんだんに取り入れ、シリーズの生みの親、スティーブン・スピルバーグとジョージ・ルーカスによる映画作りの原点に迫る作りになっているからだ。ワールド・プレミアが行われた第76回カンヌ国際映画祭での記者会見と、公開前のプレスイベントから監督と出演者たちのコメントをお届けする。
「私がこの映画に参加するのは、前作から15年のギャップを埋めるためではなく、物語を語るため」(ジェームズ・マンゴールド)
その偉大すぎる先駆者から第5作目の演出を引き継いだマンゴールド監督は、17歳の時にNY北部のシネコンで『レイダース 失われたアーク《聖櫃》』を観て「映画監督になりたい!」と切望したという。カンヌ国際映画祭で行われた記者会見で、マンゴールド監督はこの大きすぎる責務に少し躊躇したことを認め、「誰もが自分なりの愛するインディ・ジョーンズ像を抱いているので、すべての人を満足させることなど不可能です。もうひとつの躊躇は、プロデューサー、俳優陣など映画界の偉大なる伝説的なスタッフたちに“採点”されるということでした。そのため、自分らしい映画だと感じられる作品を作ることが最も誠実な参加の方法だと考えました。私がこの映画に参加するのは、前作(『インディ・ジョーンズ クリスタル・スカルの王国』)から15年のギャップを埋めるためではなく、物語を語るためなのだ、と」と決意を述べる。
マンゴールド監督の覚悟に対し、インディ・ジョーンズ博士ことフォードは、「いい映画が観たかった、それだけです」と反応。「5作の完結編を、すばらしい映画として観たかった。物語を完結させたかったのです。若さと、若さゆえの勢いに多くを委ねていたこの男にのしかかる人生の重みにより、彼が再起やサポートを必要とする姿を観たかったのです。そして、深い信頼関係を築いて欲しかった。ジム(マンゴールド監督)と仕事をしたかったことも理由の一つです。ジムは情熱と技術、すばらしい脚本で貢献してくれました。幸運なことにこのような才能あふれる俳優陣が参加してくれて、(音楽の)ジョン・ウィリアムズがもたらしてくれたものもあります。それらすべてが、老いた私を支えてくれました。私はこの仕事を愛していて、ただ、いい作品を作りたいだけです。そのような機会に恵まれた私の人生は、本当に幸運でした。どうもありがとうございます」と、カンヌ国際映画祭で名誉パルムドールを受賞したフォードは感慨深そうに挨拶した。