『君たちはどう生きるか』山時聡真が明かす、ジブリ作品に主演する“重み"と18歳の胸のうち「唯一無二の存在になりたい」
「映像が入った状態でアフレコをしました。眞人からもらったのは、“堂々とする力”」
2022年の9月にオーディションが行われ、アフレコが敢行されたのはその2か月後の11月。完成した映像が入った状態で、台本の冒頭から順を追う“順撮り”によって進められたという。山時は一人でアフレコに臨み、ほかのキャストたちは彼の演じる眞人を軸に声を吹き込んでいった。
初声優として眞人を演じるうえでは相当な苦労もあった様子で、「実写の演技ならば、顔や表情、身振りや手振りを使うこともできますが、声だけとなるとどうやって表現したらいいんだろうとたくさん考えて。自分が眞人になるためには、眞人が痛がっていたら自分もそうするなど、眞人と同じ顔をしてみようと思いました。人間の構造として、顔と声は繋がっている部分も多いと思います」と新たな発見を繰り返しつつ、圧倒されるような映像表現からもたくさんの演技を引きだされたという。
不思議な世界へと脚を踏み入れた眞人が、白い紙に囲まれて寝ている夏子に話しかけようとするシーンはとりわけ印象深いそうで、「眞人にとっての試練が、ものすごい映像で表現されていて。白い紙が飛んできて、眞人がもがきながらも『夏子母さん!』と叫ぶんですが、あれは映像に影響を受けて出てきた力強さです。一発でOKをもらえたシーンですが、アニメーションの表現が引きだしてくれたお芝居だったと感じています」と述懐。また「母が水のように溶けていくシーンも印象的です。『なんで溶けたんだろう』とたくさん考えましたし、眞人を演じている僕自身も下の世界に引き込まれていくような、魂が取られていく感覚になりました」と本作の描く世界に魅了されたと話す。
本作を通して実感したジブリ作品の魅力とは、どのようなものだろうか。すると「火や水、自然もいろいろな描き方をされていて、現実では見られないようなものを目にできる。ジブリ作品は自分で考えることも大事で、だからこそたくさんの考察も生まれるんだと思います。考えたことも取り入れながら完成するというか、“自分のなかで自分のジブリを作る”ということができるのが、ジブリ作品の魅力なのかなと思いました」と想いを巡らせた。
眞人があらゆる人と出会い、対話していくことで成長していく姿を描く本作を通して、「僕自身、いろいろなものに影響をされて生きていきたいと思った」とこれからの人生において胸に刻んでおきたいメッセージを受け取ったとも。
「眞人は本を読んだり、キリコさんやヒミ、青サギたちに出会って、彼らに影響を受けながら変化をしていきます。それってとてもすばらしいことだなと思って。悪い影響が襲いかかりそうになる時もあるかもしれないけれど、それをきちんと跳ね除けて、自分からいい影響を受け取りにいく生き方をしたいなと思いました」としみじみ。「眞人がたくさんの助けを借りながら成長していくように、僕もいろいろな人に助けられて眞人を演じきることができました。これからの俳優人生を歩んでいくうえでも、“『君たちはどう生きるか』で眞人を演じた人”という代名詞は絶対についてくるものだと思います。それは本当に胸を張れることだし、堂々としていたい。眞人から、堂々とする力をもらったような気がしています」と本作がこれからの自分を励ますような存在にもなっている。