童貞たちの青春コメディから『ミュータント・タートルズ』まで!コメディでヒットを連発するセス・ローゲンの作り手としての足跡
下ネタだけじゃない!現代的にアップデートされたメッセージも発信
よくも悪くもティーンの心を忘れない“男子ノリ”なコメディが多い印象だが、そこから成長も見せており、現代的な視点が盛り込まれた作品も生みだしている。
処女を捨てたい高校生の女子3人組とそれを阻止したい親たちのバトルを描いた『ブロッカーズ』(18)は、『スーパーバッド 童貞ウォーズ』を逆転させたようなコメディ。純潔信仰といった“古きよき”価値観に中指を立てつつも性行為というセンシティブな題材を真摯に扱い、また自然にカミングアウトを盛り込んだり、強烈な下ネタは相変わらずながらもアップデートしたメッセージを発信。
さらにシャーリーズ・セロンを主演に招いた『ロング・ショット 僕と彼女のありえない恋』(19)は、女性初の大統領を目指すキャリアウーマンと失業中の記者の逆シンデレラストーリーなラブコメで、男性優位の世の中のおかしさをシニカルに笑うなど、時代に合わせた価値観を提示してきた。
青春×笑い×現代的メッセージ!セス・ローゲンの集大成的な『ミュータント・タートルズ』
そんなコメディの才能と時代感覚でヒットを量産してきたセス・ローゲンといえば、無類のコミック好きとしても有名。残虐ドラマ「ザ・ボーイズ」でも製作総指揮を担当するなど、年々手掛ける作品の幅を広げてきた。公開中のCGアニメーション『ミュータント・タートルズ:ミュータント・パニック!』は、そんなローゲンのキャリアが詰まった集大成的な1作とも言える。
もともとはアメコミとしてスタートした「ティーンエイジ・ミュータント・ニンジャ・タートルズ」を、手書き風のCGアニメーションで映画化した本作は、カメ忍者4人衆が謎の悪党スーパーフライの目論見を止めるべく奮闘するというもの。
彼らの行動の動機となるのが、人間の世界で高校に通って、遊んだり、恋をしたり…という普通のティーンエイジャー生活への憧れ。ひょんなことから出会ったジャーナリスト志望の高校生エイプリルにレオナルドが心奪われたりと青春映画としての側面も強い。「タートルズ」の大ファンだというローゲンは作品への愛を示しつつも、懐古的な思い入れを盛り込むのではなく、彼らをZ世代のティーンとして描き、新たなタートルズ像を構築している。
さらに悪党側も過去に人間から虐げられた過去を持つキャラクターであり、ミュータントと人間がどうのようにして生きていくのかという本作のテーマは、多様性を受け入れることが求められる現代ならでは。単純な善悪の物語にせず、アップデートした価値観が語られている。
自分の好きなものとやりたいこと、そして時代性とのバランスを取った作品作りで屈指のヒットメーカーとなったセス・ローゲン。『ミュータント・タートルズ:ミュータント・パニック!』では声の演技だけでなく、彼の作り手としての気概も感じてほしい。
文/サンクレイオ翼