青春×ラブストーリー×ホラー作品を手掛ける台湾屈指の異色の才能、ギデンズ・コーとは何者か?
日本版リメイクも人気を博した単独長編初監督作『あの頃、君を追いかけた』
まず、単独長編初監督作にして金馬奨の最優秀新人監督賞候補になった『あの頃、君を追いかけた』(11)。日本でも山田裕貴、齋藤飛鳥共演の同名タイトルでリメイクされ、2010年代の青春群像劇の傑作としても、ギテンズ・コーの代表作としても名を残す。高校のクラスメイトの10年にも及ぶ群像劇というだけでも(それが監督本人の体験談がベースだったとしても)、初長編の監督作としては難易度が高い。なのに、登場するキャラクター誰も取りこぼさず、全員を主人公として描くことに成功。学園コメディに“あるある”な中学校生活の何気ない日常を描いたと思ったら、卒業後の彼らに降りかかる様々な大人の階段はもちろん、1999年に台湾で起きた921大地震など社会的な事象を物語のなかに自然に取りこみ、ドラマに厚みを持たせることにも大成功。いつまでもバカなことばかり考えて自分の気持ちを素直に表せない主人公の男子を演じたクー・チェンドンは第48回台湾金馬奨最優秀新人俳優賞を受賞した。
ジャンルをクロスオーバーさせた『怪怪怪怪物!』
そして『怪怪怪怪物!』(17)はさらにぶっ飛びだった。なんせホラー青春学園コメディ。冒頭からしてグロッグロの血みどろで始まるものの、よくある学園ドラマへと唐突にチェンジ。そこからいっきにモンスターホラーパニックへと転じる。そもそも高校生たちがゾンビらしきモンスターに遭遇したことをきっかけに、モンスターとの友情が芽生え…というのも、ちゃんちゃらおかしい設定。書いていても「なんのこっちゃ!」と言いたくなるが、本当にこの展開だから驚く。いち作品の中でジャンルをクロスオーバーさせること自体、商業映画としてはかなりリスクがあるし、下手すれば物語が破綻する。だが、この作品でも彼らしいストーリーテリングの妙で難なく荒波を乗りこなしている感があるのだ。
このようにギデンズ・コーの作品のタッチは、作品ごとに異なるものの、共通しているのは物語の構築・構成・展開のうまさにある。小説を読み進めるかのごとく自然と、それでいて驚きの仕掛けが満載。しかも奇をてらったシーンが数多く盛り込まれているのに、登場人物たちは一般的な若者で、彼らの日常自体は我々となにも変わらない。オリジナル作品のため馴染みがある物語ではないはずなのに、目線はあくまで観客と同じなので、感情移入が非常にしやすく、作品の中のどこかに自分を見出すことができる。ストーリーテラーとしての腕を磨いた上で、物語を過不足なく映像に落とし込むすべを身に着けたギデンズ・コーだからこそ実現する、洗練された作風。これが彼の特色だろう。
心に刺さる1本を見つけよう!「TAIWAN MOVIE WEEK(台湾映像週間)」特集
「TAIWAN MOVIE WEEK(台湾映像週間)」
開催日程:10月13日(金)~28日(土)
開催場所:ユナイテッド・シネマ アクアシティお台場
ところざわサクラタウン ジャパンパビリオンホールB
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