『ザ・クリエイター/創造者』でもオマージュ炸裂!大友克洋の「AKIRA」に影響を受けたハリウッドの作品
『GODZILLA ゴジラ』(14)などで知られるギャレス・エドワーズ監督が、AIと人間の間で争いが勃発する近未来を舞台に、潜入捜査官とAI少女の逃避行を描いたSF大作『ザ・クリエイター/創造者』が現在公開中。日本の作品に造詣の深い“オタク”なエドワーズがメガホンを握る本作には、物語の舞台“ニューアジア”の街を彩る看板など日本のエッセンスが満載。なかでも大友克洋の「AKIRA」から多大なるインスピレーションを受けたことを公言している。そんな『ザ・クリエイター/創造者』をはじめ、これまで「AKIRA」がハリウッドにもたらしてきた影響について、数々の作品と共に振り返っていきたい。
『ザ・クリエイター/創造者』
AIによって核が爆発したあとの世界を舞台に、AIと共存する生活を送るアジア圏とAI撲滅を目指す欧米圏の戦争が描かれる『ザ・クリエイター/創造者』は、設定やルックなど「AKIRA」を思わせる要素が盛りだくさん。
例えば、軋轢の発端となる核爆発によって大きなクレーターがポッカリと開いたロサンゼルスの“グラウンド・ゼロ”の光景は、アキラや鉄雄の力によって地面が大きく窪んだ「AKIRA」のネオ東京そのもの。ジョシュア(ジョン・デヴィッド・ワシントン)がAIの少女アルフィー(マデリン・ユナ・ヴォイルズ)を見つけた地下の施設は、アキラが地下深くに厳重に封印されていた施設を思わせ、その施設の中でおもちゃに囲まれたアルフィーの姿は、軍の研究所で過ごすキヨコ、マサル、タカシを彷彿とさせる。
さらに衛星のように宇宙を漂いながら地上をサーチし、AIロボットを見つけだしてはミサイルを放つ欧米諸国の兵器兼巨大基地ノマドは、“宇宙空間から爆撃を放つ”という点が大量破壊兵器SOLと共通。また、“ネオ”東京から来ているのではと勘繰ってしまうような“ニュー”アジアというネーミングまで、随所に「AKIRA」らしさが散りばめられた作品となっている。
『パシフィック・リム』
「AKIRA」好きを公言する監督は多い。“オタク”監督で、日本と関係の深い作品も手掛けるなど、なにかとエドワーズとの共通点が多いギレルモ・デル・トロもその筆頭。デル・トロのX(旧Twitter)には、過去に金田バイクのフィギュアが写った写真もアップされていた。
怪獣など日本のエッセンスが盛り込まれた『パシフィック・リム』(13)の来日PRタイミングでは、デル・トロたっての希望で大友との対談企画を実施。イドリス・エルバが演じた強面で屈強なペントコスト司令官は「AKIRA」の敷島大佐をモデルにしたことを明かした。
『レディ・プレイヤー1』
あの巨匠スティーヴン・スピルバーグも、日本のポップカルチャーからの引用を盛り込みながら仮想空間での“宝探し”を描いた『レディ・プレイヤー1』(18)の来日プロモーションの際に「『AKIRA』のバイクが大好き」とコメント。
『レディ・プレイヤー1』では、ヒロインのアルテミス(オリヴィア・クック)が乗るバイクとして「AKIRA」の金田バイクをセレクト。「タイヤのグリーンフラッシュを忠実に再現した」と話すなど、そのこだわりを明かしている。
『クロニクル』
ジョシュ・トランク監督による『クロニクル』(12)は、劣等感を抱える高校生のアンドリュー(デイン・デハーン)が、強大な力を手に入れたことから徐々にダークサイドへと堕ち、世間に恐怖をもたらしていく青春超能力ムービー。
冴えない学生が力を手に入れ、闇堕ちしていくという設定はまさに鉄雄そのもので、空を飛びながら破壊の限りを尽くすクライマックスシーンなど、公開当時、実写版「AKIRA」と話題になったのも納得。トランク監督は「AKIRA」の大ファンであり、敬意あるオマージュを『クロニクル』で捧げたとインタビューでも語っていた。
「ストレンジャー・シングス 未知の世界」
Netflixの大ヒットドラマ「ストレンジャー・シングス 未知の世界」のクリエイターコンビとして知られるマット&ロスのダファー兄弟も、インタビューでたびたび、ドラマが「AKIRA」から受けた影響を明かしている。
特に主人公の超能力少女“エル”ことイレブン(ミリー・ボビー・ブラウン)は、軍の超能力研究所にて番号で呼ばれながら育ったというアキラやキヨコら“ナンバーズ”に通じるキャラクター。最新のシーズン4ではエルの研究所時代が明かされており、番号で呼ばれる被験者の子どもたちがおもちゃで遊んでいる施設の様子から「AKIRA」のチャイルドルームを想像した人も少なくないはずだ。
『LOOPER ルーパー』
『スター・ウォーズ/最後のジェダイ』(17)で知られるライアン・ジョンソン監督によるSF作『LOOPER ルーパー』(12)も大友作品のエッセンスを感じる映画の一つ。本作は、未来から送り込まれてきたターゲットを始末する主人公の殺し屋ジョー(ジョセフ・ゴードン=レヴィット)が、のちに犯罪王となる幼き子ども、シド(ピアース・ガニォン)の抹殺を謀る“未来の自分”に立ち向かうというものだ。
物語の鍵を握るシドが超能力を持つ子どもという設定に加え、感情的に力が目覚めてしまう際の冷徹な表情についてジョンソン監督は「大友の『童夢』をモデルとした」とコメント。「童夢」はたまた「AKIRA」的なエッセンスが存分に感じられる1作となっている。