ロマコメ『ブルックリンでオペラを』で新たな顔を披露!変幻自在の名優、P・ディンクレイジのほっとけない魅力
古典文学がベースとなる『シラノ』では歌&アクション&恋愛に挑戦!
様々な役柄を演じてきたディンクレイジだが、近年では『ウィンストン・チャーチル ヒトラーから世界を救った男』(17)のジョー・ライト監督によるミュージカル映画『シラノ』にもトライ。本作はエドモン・ロスタンの戯曲「シラノ・ド・ベルジュラック」を舞台化したミュージカルが原作で、彼は17世紀に生きる勇猛果敢なフランス軍の兵士であり、詩人でもあるシラノに扮した。
自分の容姿にコンプレックスがあるシラノは、ロクサーヌへの恋心を隠して彼女が恋した男性との恋愛を成就させるために奔走する。もともとの戯曲ではそのコンプレックスの元は“大きな鼻”だったが、それを舞台&本作では“身長”へとチェンジ。腕っぷしは強いが愛する女性には弱いシラノをディンクレイジは哀愁たっぷりに表現。この作品では歌声だけでなく剣術も披露しているが、「ハードルが高いほど燃えるタイプ」だと公言する彼は1カ月間みっちりとトレーニングを行い、華麗なるソードアクションを繰り広げた。
揺れ動く男を演じた『ブルックリンでオペラを』で新たな顔を披露
そんなディンクレイジの最新作となるのが、伝統と洗練されたアートとカルチャーが共存するブルックリンを舞台とするロマンティック・コメディ『ブルックリンでオペラを』だ。現代オペラの新作のアイデアが浮かばず困ったスティーブンは、妻で主治医のパトリシアから勧められ、愛犬の散歩に出かける。そして途中で立ち寄ったバーで曳き船の船長だという風変わりな女性カトリーナ(マリサ・トメイ)と出会い、人生を激変させていく。
これまでも恋愛要素が入った数々の作品に出演してきたディンクレイジだが、本作では魅力的な妻のパトリシアと、作曲家としてのインスピレーションを与えてくれるミューズ(女神)のカトリーナとの三角関係に陥り、揺れるモテ男をセクシーかつユーモラスに体現。彼は「これまで自信に満ちた役を演じてきたが、さほど自信が持てずにいる人物を演じてみたいと思っていました。そういう意味でも今回演じたスティーブンには心から親近感を覚えました」とコメント。ロマンティック・コメディという新領域で、役者としての新たな顔を披露し魅せてくれている。
本作のメガホンを取ったのは、アメリカを代表する著名な劇作家アーサー・ミラーを父に持つ、ロマコメの名匠レベッカ・ミラー。また、グラミー賞を2度受賞したブライス・デスナーによる現代オペラも斬新かつ新鮮な驚きをもたらし、作品を格調高く彩っている。そしてアン・ハサウェイ、ピーター・ディンクレイジ、マリサ・トメイの豪華俳優陣も集結。実力も魅力も兼ね備えた三者が織りなす、ちょっぴり笑えて感動できるハートウォーミングなラブストーリーは必見だ。
コンプレックスではなく個性と捉え、自ら道を切り拓いてその地位を不動にしたディンクレイジ。彼が演じるからこそその役柄は人間的深みとリアリティを増して光輝く。今後も彼は卓越した演技力と人間力で、キャラクターにあふれる魅力を与えていくことだろう。
文/足立美由紀