『ウォンカ』の“紳士“ウンパルンパ役で妙味を発揮、名優ヒュー・グラントの特異な存在感
ひとクセもふたクセもある役柄に魅力を発揮!
ヒューが大富豪の武器商人を演じたスパイ・アクションが、ジェイソン・ステイサム主演作『オペレーション・フォーチュン』(22)である。英国諜報局MI6から闇市場で取引される危険なブツの奪取を請け負ったエージェント、フォーチュンの活躍を描く本作。ヒューは闇取引の仕掛け人であるグレッグを演じている。孤児を助ける慈善事業を行いながら、その裏で見境なく武器を売りまくるという表と裏の顔を持つ役はヒューにぴったりだ。
ステイサム主演作と聞いてハイテンションなアクションを思い浮かべる人も多いだろうが、監督がガイ・リッチーだけに裏をかき合うだまし合いを軸にした本作はオフビートなスパイ映画。グレッグも悪人だが意外にいい奴だったりしてと思わせながら、最後にどす黒い一面をのぞかせるヒネリを効かせたキャラクター。現場でリッチーから即興を求められたというヒューは、狡猾な策士を軽やかに演じている。リッチーとは『コードネーム U.N.C.L.E.』(15)、『ジェントルメン』(19)に続くこれが3度目のコンビ作。映画スターにぞっこんで、その弱みをフォーチュンに突かれてしまうという役どころは、『ジェントルメン』で演じた映画好きの腹黒い私立探偵フレッチャーからの繋がりなのかも。
クリス・パイン、ミシェル・ロドリゲス共演の『ダンジョンズ&ドラゴンズ/アウトローたちの誇り』(23)で、ヒューはアクションファンタジー大作に挑戦した。人気ゲームを映画化した本作は、さまざまな種族やモンスターが生息する世界フォーゴトン・レルムの物語。ヒューは主人公エドガンのかつての盗賊仲間、詐欺師フォージを演じている。剣と魔法が支配する幻想世界で繰り広げられる、お宝をめぐるアドベンチャー。中世風コスチュームに身を包み、このジャンルにヒューが出演したことはひとつの事件と言っていい。
フォージは、投獄されたエドガンの代わりに彼のひとり娘キーラの面倒を見ていた頼れる奴だが、実は…というやはり裏の顔を持つ本作のヴィラン。ヒューは映画のトーンに合わせてオーバーアクションで役に臨んだが、直情型のキャラクターが多い中その豊かな感情表現に思わず引き込まれてしまう。エピローグで笑いをとり、映画を締めくったヒュー。本作に続いて公開されるのが『ウォンカとチョコレート工場のはじまり』なのも図ったようだ。
最新作ではVFXで頭身を加工して、小さな種族ウンパルンパを演じたヒュー。マイペースで予測できない言動やウォンカとの奇妙なバディ感に加え、『パディントン2』の囚人ダンスに続いて歌って踊るウンパルンパダンスも披露するなど見せ場もたっぷり。ティモシー・シャラメの“ウォンカぶり”はもちろんだが、名優ヒュー・グラントだからこそ味わえるウンパルンパの魅力にも注目してほしい。
文/神武団四郎