事故物件、奇祭、憑依チャレンジ…若者の悪ノリが招いた、背筋が凍る“しっぺ返し”
強盗に押し入った先にいたのは、殺しのプロ!『ドント・ブリーズ』
『ドント・ブリーズ』(16)は独居老人宅に侵入した窃盗仲間の若者たちが逆に命をねらわれる話だ。10代の少女ロッキー(ジェーン・レヴィ)は、幼い妹を連れネグレクトの母から逃げることを夢見ていた。大金を持つ盲目の老人(スティーブン・ラング)の存在を知った彼女と2人の空き巣仲間は、深夜に老人宅に侵入。ところが家主は戦場を経験した退役軍人で、研ぎ澄まされた感覚の持ち主だった。
監督はサム・ライミの代表作をリメイクした『死霊のはらわた』(13)で絶賛されたフェデ・アルバレス。本作は彼の2本目の長編で、ライミがプロデュースを務めている。物語の舞台はデトロイト市の寂れた地区。ライミの故郷であるデトロイトは50年代より自動車産業の中心地として栄えていたが、アジア車の進出などにより財政が悪化し、2013年に市は破産を申請した。老人が住むのは空き家が並ぶ過疎地で、ギャングが廃工場を裏取引の場にするなど荒廃した町の状況が伺える。
そんなデトロイトでどん底の暮らしをする小悪党が目をつけたのは、盲目とはいえ元殺しのプロフェッショナル。侵入を気づかれた仲間の一人が拳銃を抜いて威嚇すると、老人は瞬時に銃を奪って少年を射殺。それを機にロッキーは狩られる側として狭い家の中を逃げ惑う。タイトルを直訳すると「息を止めろ」。音や気配を頼りに迫り来る老人と、その真横で息を殺して立ち尽くすロッキーたちの攻防戦は、息苦しくなるほどスリリング。ショートカットで成功を求めた者たちは、あまりに大きな代償を払わされる。中盤以降の思いがけない展開を含め、パンチの効いたスリラーだ。
実在する心霊スポットで、若者たちが次々に死亡『犬鳴村』
肝試しが夏の風物詩とし親しまれてきた日本。動画配信サイトの普及によって、廃墟や心霊スポット探検はますます盛んになっている。そんななかで登場した『犬鳴村』(20)は福岡家に実在する心霊スポット“旧犬鳴トンネル”を題材にした心霊ホラーだ。YouTuberのアッキーナこと明菜(大谷凜香)と恋人の悠真(坂東龍汰)は都市伝説の真偽を確かめるため、地図から消された犬鳴村に迷い込む。それを機に、悠真の妹で霊感の強い奏(三吉彩花)の周囲では次々と人が死んでいく。
犬鳴村は昭和初期まで存在していたと言われる幻の村。独特の風習のため周囲から忌み嫌われていた村人たちは、陰謀によって廃村へと追い込まれる。明菜たちの犬鳴村行きを機に、町には村人たちの霊があふれ出る。本作はフォークホラーと心霊ホラーの合わせ技。深夜2時に電話が鳴る呪われた電話ボックス、普段は封鎖されているのに突然口を開けるトンネル、犬のように暴れだす狂った人々など定番要素が盛り込まれ、肝試しに訪れた若者たちは携帯で会話しながら自殺をしたり、水もないのに水死するなど、死に様もユニークだ。
監督は「呪怨」シリーズや『ホムンクルス』(21)など数々のホラーやスリラーを手掛けてきた清水崇。時間や空間を操りながら幻想世界を生みだす手腕は本作でも冴え、現在と過去を結んだ因果のドラマを展開する。映画は口コミで話題呼び「恐怖の村」シリーズに発展。大谷演じるアッキーナ(と思わしき人物)は第2弾『樹海村』(21)、第3弾『牛首村』(22)にも登場し、前者では富士の樹海に迷い込んでいた。