コラム 2023/12/30 12:30

長～い作品も“安心して”堪能！年末年始にゆっくり向き合いたい、長尺名作のススメ

このところ映画の「上映時間」が話題になることが多い。アクション大作や、アカデミー賞に絡む巨匠の名作で、ここ数年、2時間半(150分)は当たり前。時には3時間(180分)を超えるものも頻繁に見かけるようになった。もともと人間の生理として、集中して映画を観られるのは90〜100分と言われ、そのあたりが上映時間の理想とされていた。しかし“長さを感じさせない”ほど没入できる映画もあり、それこそが傑作だとも考えられる。

実際に歴史を振り返れば、観客動員数では今も世界最高といわれる『風と共に去りぬ』(1939／228分)、フランス映画史に残る『天井桟敷の人々』(1945／190分：2部構成)、日本映画では『七人の侍』(1954／207分)、そしてあの『タイタニック』(1999／194分)と、3時間超えの名作が次々と並ぶ。

巨匠たちが“本当に作りたい映画”を目指したら…

「私、飛んでるわ！」の名シーンは、82分ごろに登場『タイタニック』[c]Everett Collection/AFLO

すべての写真を見る(8件)

ただ、ここ数年の“長編化”には大きな理由がある。それは配信との関係だ。上映時間が長い映画は、1日で上映できる回数も少なくなることから、スタジオや劇場側に敬遠されがち。しかし監督たちは“自分が本当に作りたい映画”を目指し、時には長尺になる。そうした志向を真っ先に受け入れていたのが配信のNetflix。基本的に上映時間に注文をつけず、自由に作らせる姿勢が、マーティン・スコセッシ監督の『アイリッシュマン』(209分)のようにアカデミー賞に絡む長大な傑作を実現させた。

デ・ニーロ！、パチーノ！など、レジェンドたちが競演する『アイリッシュマン』[c]Everett Collection/AFLO

この流れに配信のApple TV+も乗り、同社製作のスコセッシ監督作『キラーズ・オブ・ザ・フラワームーン』は上映時間が206分。やはり本年度の映画賞レースで存在感を示している。オクラホマ州で起こった先住民の連続死亡事件のミステリーに、FBIが誕生するきっかけも描いた本作は、1920年代も鮮やかに再現され、上映時間の長さを“感じさせなかった”という評価が相次ぐ。同じくAppleではリドリー・スコット監督の『ナポレオン』も158分。4時間におよぶディレクターズカット版もある。