さらばジェイソン・モモア版アクアマン!?『アクアマン/失われた王国』で最後の雄姿を目撃しよう
映画史に残る合戦シーンなど、爽快なアクションたっぷり!
アーサーとオームの争いを描いた1作目の見せ場は、なんといっても海中アクションにある。主な舞台は海中深くにあるアトランティス。幻想的な色彩あふれる海中の浮遊感や、猛スピードで泳ぎ回るアーサーや海中カーの激しいチェイスが体感的な映像で描かれている。監督は『ワイルド・スピード SKY MISSION』(15)のジェームズ・ワン。潜水艦をトライデント(=三又槍)で豪快に切り裂いたり、溶岩の吹き出す海底火山での死闘、潜水艇による海底ドッグファイトなど、「ワイルド・スピード」を彷彿とさせるアドレナリン全開の海中アクションが次から次に登場する。
サスペンス映画で名をあげたワン監督の持ち味が、変幻自在なカメラワーク。それは「アクアマン」シリーズでも健在で、アクションの最中にいきなり画面が回転するなどゲームのようなトリッキーな映像が、アトラクションのライドに乗っているかのような臨場感を生み出した。海の生物たちによるスペクタクルも圧巻だ。クジラやサメ、魚竜モササウルス、巨大なシードラゴンまで多種多様な生き物たちが次々と登場し、海底人や海の生物の大群が入り乱れるクライマックスの一大スペクタクルは、映画史に残る合戦シーンの一つといってもよいだろう。
「ワイスピ」にも通じるドラマチックな人間模様
親と子、兄弟の絆や確執を描いた人間ドラマも見ごたえがある。アーサーとオームは王位を巡り激しい争いを繰り広げるが、物語のベースにあるのは家族の絆。男手ひとつで育ててくれた父との絆、赤ん坊の頃に姿を消した母への複雑な思い、違う世界で育った弟とのボタンのかけ違いなど普遍的な物語が共感を呼ぶ。さらに、パワースーツを着たブラックマンタ(ヤヒヤ・アブドゥル=マティーンII)というヴィランも登場するが、彼の目的もかつてアーサーとの戦いで命を落とした父親の敵討ち。弟の敵を討つためドムファミリーに牙をむく『ワイルド・スピード SKY MISSION』で初登場した“戦闘マシーン”デッカード・ショウ(ジェイソン・ステイサム)とリンクするキャラである。立場や環境の違いが生み出すドラマチックな人間模様も見どころなのだ。
エンタメ要素を詰め込んだ『アクアマン』は、公開されると世界各国でNo.1のオープニングを達成。歴代ワーナー・ブラザース映画全作品の世界興収ランキングでも『バービー』(23)、『ハリー・ポッターと死の秘宝 PART2』(11)に次ぐ歴代3位(2024年1月現在)という破格の大ヒットを記録した。そんなアクアマンの原作は、バットマンやスーパーマンでおなじみのDCコミックス。モモア演じるアクアマンが最初にスクリーンで大暴れしたのも、バットマンやワンダーウーマンと共闘した『ジャスティス・リーグ』(17)だった。ただし、シリアスな作風が持ち味のDCユニバースに対し、純真エンタメ作として完成した『アクアマン』のテイストは別もの。記録破りの大ヒットを達成したのも、痛快さや圧倒的なおもしろさ、そしてモモア演じるアクアマンのキャラクターの魅力がその要因だろう。