重岡大毅主演『ある閉ざされた雪の山荘で』が好スタート!東野圭吾作品はなぜ映像化との相性が良いのか
1月12日から1月14日の全国映画動員ランキングが発表。昨年末の公開からNo. 1の座を守り続けている『劇場版 SPY×FAMILY CODE: White』(公開中)が、今週も首位をキープ。これで4週連続Vを飾った。
1月13日から入場者プレゼント第2弾「遠藤達哉先生描き下ろしARイラストカード」の配布がスタートした『劇場版 SPY×FAMILY CODE: White』。この週末3日間で観客動員22万7000人、興行収入3億1700万円を記録。公開初日から24日間の累計成績では動員361万人、興収48億5000万円を突破しており、興収50億円の大台も目前まで迫っている。
東野圭吾の“幻の名作”を映画化!『ある閉ざされた雪の山荘で』が2位に初登場
2位に初登場を果たしたのは、東野圭吾の同名小説をWEST.の重岡大毅主演で実写映画化した『ある閉ざされた雪の山荘で』(公開中)。初日から3日間の成績は動員15万人、興収2億1900万円と上々なスタートを切っている。
重岡を筆頭に、間宮祥太朗、中条あやみ、岡山天音、西野七瀬、堀田真由、戸塚純貴、森川葵と若手実力派キャストが集結した本作。オーディションを勝ち抜き、ある宿泊所に集められ“閉ざされた雪の山荘で連続殺人事件が起こる”というシチュエーションの演技をすることになった7人の劇団員たち。しかし参加者たちが次々と姿を消し、残された者たちはこれがオーディションなのか、本当の殺人事件なのか、真相を解き明かそうとしていく。
「ガリレオ」シリーズや「新参者」シリーズをはじめ、映画やテレビドラマ問わず数々の人気作を生みだしてきた東野圭吾。その著作の映画化作品は日本国内ではこれまで23本、国外でも5本が製作。興収49.2億円を記録した『容疑者Xの献身』(08)を最大のヒット作に、実に半数近くが興行収入10億円を超える成功を収めており、『ナミヤ雑貨店の奇蹟』(17)は日本アカデミー賞優秀作品賞を受賞。いまや日本の映像業界に欠かせない作家といっても過言ではない。
なぜこれほどまでに多くの作品が映像化されているのか。やはり明瞭な筆致で作品世界がイメージしやすく、推理小説からファンタジー性の強い作品まで情緒のあるヒューマンドラマが常に込められていること。そして、それぞれの作品に強固なプロットが存在し、登場人物が一人残らず丁寧に描き込まれているため、原作の世界観や登場人物を存分に活かしながらあらゆる脚色にも耐えうることが考えられる。ほかにもいくつか理由が思い浮かぶが、端的に言えば映像化との相性の良さが抜群。しかも小説の時点で限りなく映画向きの作品が多いのは、東野自身が学生時代に映画監督になりたいと思っていたことが関係しているのだろう。
今回の『ある閉ざされた雪の山荘で』の原作が発表されたのは1992年。これまで映画化された東野作品のなかでも『変身』(05)の次に古い、キャリア初期の作品である。王道の密室劇の様相を呈しながら自らそれを打破する大胆な設定に、複雑に絡み合う登場人物たちのドラマ、多層的なトリックがいかにも推理文学的であり、長らく映像化は困難とされ、“幻の名作”ともいわれてきた作品だ。
誰が“演技”をしているのかわからないことがこの作品の醍醐味であり、映像でもそれが活かされる必要がある。メガホンをとった飯塚健監督は、『荒川アンダーザブリッジ』(12)や『虹色デイズ』(18)、『ヒノマルソウル〜舞台裏の英雄たち〜』(21)と、ジャンルを問わずに複数の登場人物を満遍なく立てた演出を得意とした作り手。彼のこれまでのキャリアを考えるとミステリー映画は少々意外なものに思えるが、この作品においてはまさに適任といえよう。東野作品のファンも納得のいく映画化になっているのではないだろうか。