立海との最初の戦いへ、そして青学卒業──ラケットを渡しながらつながっていく王子様の魂

コラム

立海との最初の戦いへ、そして青学卒業──ラケットを渡しながらつながっていく王子様の魂

全国制覇を託す青学、勝利を信じる立海

「ミュージカル『テニスの王子様』4thシーズン 青学(せいがく)青学vs立海」
「ミュージカル『テニスの王子様』4thシーズン 青学(せいがく)青学vs立海」[c]許斐 剛/集英社・テニミュ製作委員会

現在上演中である関東大会立海戦と言えば、本作での最強校である立海との初戦であり、関東大会優勝がかかる非常に大事な戦いだ。青学(せいがく)も強豪校ではあるが、「常勝集団」と評される立海はやはり一筋縄ではいかない存在であり、とりわけ1年生の主人公、越前リョーマは今回が立海初対戦。リョーマが立海相手にどういったパフォーマンスを見せるのかは先輩や他校の選手にとっても未知で、ここでの結果が全国大会に大きく響いてくるという意味でも、物語において重要な一戦なのだ。

本来『テニスの王子様』において青春学園中等部は、関東大会と全国大会の2回、立海大附属中学校と対戦する。しかし、この4thシーズン立海公演で青学キャストは卒業を迎えることが決定している。つまり、現青学キャストにとっては、リベンジができない最初で最後の立海戦ということになる。

主人公校ゆえに、当然すべての公演に出演する青学キャストは、ストーリーを1周する間に代替わりするのが通例。2ndシーズンの6代目&7代目、3rdシーズンの9代目&10代目では、それぞれ越前リョーマ役の小越勇輝、阿久津仁愛のみ続投となったが、4thシーズン現青学キャストは、リョーマ役の今牧輝琉も含めた全員が卒業する。この代替わりという制度は1stシーズンから続く伝統。もちろん、酸いも甘いも嫌になるほど味わいながらここまで駆け抜けてくれたキャストが、最終的に全国大会で掴む頂を見られないという悔しさや、もうこのキャストがこのキャラクターを演じることはない、という悲しさは、いくら“いつか来るもの”と理解していても苦しいもの。その一方、先代、ひいてはこれまでのキャストたちが築き上げた各キャラクターの魂を背負い、さらに次世代へとバトンをつないでいく王子様たちのリレーは、代替わりという制度ならではの輝きを見せてくれる。

テニミュは、忠実に漫画「テニスの王子様」を再現している。要するに、結末が決まっている以上、そのシナリオが覆ることはない。しかし、同じ試合、同じ1日を毎日繰り返していく彼らは、いつか手に入るかもしれない“勝利”を心から信じ、演者である以上にキャラクターとして勝利に向かってガムシャラに突き進んでいく。その姿を見ていると、「今日こそは勝つかもしれない」「今回こそは優勝するかもしれない」、そんな気持ちを抱かずにはいられない。

そんな、“前へ進み続ける青学”や、“勝利を信じる対戦校”が生むのは、代替わりや連日同じシナリオを繰り返すテニミュだけが持つエモーション。観劇者と同じ時間を重ねていくキャストが、キャラクターとして生きながらテニスに真っ直ぐ向き合うことで生まれる喜怒哀楽に、我々ファンは心を奪われてしまうわけだ。

王子様たちがつなぐ魂のリレーを見届けよ!

「ミュージカル『テニスの王子様』4thシーズン 青学(せいがく)青学vs立海」
「ミュージカル『テニスの王子様』4thシーズン 青学(せいがく)青学vs立海」[c]許斐 剛/集英社・テニミュ製作委員会

3月2日(土)には、大千秋楽の模様がU-NEXTにてライブ配信される「ミュージカル『テニスの王子様』4thシーズン 青学vs立海」。現在キャストたちは全国各地を巡り再び東京へと戻り、それぞれの勝利と誇りのため戦いを重ねている。

まずは関東優勝に向け魂を燃やす挑戦者青学、そして真っ向勝負で彼らに立ちはだかる王者立海。軋むテニスシューズの音を、弾んだテニスボールのラリーを心に焼きつけながら、試合の行方を見届けてほしい。


文/佐藤来海

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