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“ずとまよ”の世界観が『好きでも嫌いなあまのじゃく』を完成させる!主題歌&挿入歌に反映された“本当の気持ち”

コラム

“ずとまよ”の世界観が『好きでも嫌いなあまのじゃく』を完成させる!主題歌&挿入歌に反映された“本当の気持ち”

挿入歌が流れるシーンは映画の重要なターニングポイントに

瑞々しくも優しい“ひと夏”で“ひと冬”の青春ファンタジー
瑞々しくも優しい“ひと夏”で“ひと冬”の青春ファンタジー[c]コロリド・ツインエンジン

それだけに、本作のような映画作品などの主題歌になった時には作品の本編と楽曲の双方で互いの行間を補い合うようにして、一つの作品世界を強化していくという親和性を発揮する。まさに主題歌をもって一本の作品が完成する、理想的なかたちが成立することとなる。本作でメガホンをとった柴山智隆監督も「届けられた楽曲は本編に寄り添いつつもそれに留まらず、より広く遠くへ本作を必要としてくださる皆様へと繋いでくれる」と賛辞を送るほど、“ずとまよ”との相性は抜群のようだ。

映画公開に先駆けて製作のツインエンジンの公式YouTubeチャンネルにアップされたのは、主題歌「嘘じゃない」の1番までの音源と歌詞が、本編映像と共に切り取られたスペシャルコラボPVだ。本編を観る前にこの映像を観ただけでも、いかにこの楽曲が作品の世界観とマッチしているかがわかるだろう。限りなく青春ドラマらしい疾走感をにじませるリズミカルなメロディーに、奥へ奥へと引き込んでいくようなACAねの力強くも情緒たっぷりな歌声。


本作のテーマでもある“隠した想い”と“本当の気持ち”というキーワードが反映されたリリックと、サビの部分に見受けられる「“ ”」という空白の表現。タイトルにもなっている「嘘じゃない」のフレーズが繰り返された後に待ち受ける、サビの後半の畳み掛けるような転調。そしてそれが抜けた後にかすかに残る穏やかな余韻。エンドロールでこの楽曲を浴びながら、それまで観てきた物語を反芻していけば、自然と心のなかにじわりと込み上げてくるものがあり、またもう一度最初から作品を観直したくなることだろう。そして2度目以降の鑑賞時には、序盤から幾度となく「嘘じゃない」が脳裏によぎる瞬間が訪れるはずだ。

ちなみに「嘘じゃない」のMVは、まさに柴山監督の“遠くへ”という言葉を体現するかのように宇宙を舞台にした壮大なアニメーションに仕上がっている。ずとまよのMVといえば、気鋭のクリエイターとのコラボが注目ポイントの一つとなっているが、今回のMVはアー写でもおなじみの「お勉強しといてよ」や「暗く黒く」も手掛けたイラストレーター/アニメーターのはなぶしが担当。『エイリアン』(79)のような雰囲気に『遊星からの物体X』(82)や『ゼロ・グラビティ』(13)を彷彿とさせる展開で映画ファンも必見。このMVでも独立した新たな世界が生み出されており、一曲で二度も三度もおいしい。

一方で挿入歌「Blues in the Closet」は、映画中盤で柊とツムギが旅の途中に立ち寄る旅館「宝寿の湯」の人々のあたたかさに触れた後、ツムギの母親を探すという目的のために出発するシーンで印象的に流れる。ここで2人は物語の舞台となる山形県の花でもあるベニバナが咲いた広大な花畑のなかを駆け抜けていく。ベニバナには「特別な人」や「包容力」といった花言葉がある。出発直前に寂しさを口にした柊に対し、旅館の女将は「そんなことじゃツムギちゃんを守ってあげられないわよ」と言葉をかけ、柊は頬を赤らめる。物語のキーポイントである柊とツムギの関係性の大きな変化の瞬間を示す重要なシーンでもまた、“ずとまよ”の楽曲が効果的に使われているといえよう。

『好きでも嫌いなあまのじゃく』は5月24日(金)より全国で劇場上映&Netflixにて配信
『好きでも嫌いなあまのじゃく』は5月24日(金)より全国で劇場上映&Netflixにて配信[c]コロリド・ツインエンジン

2曲の“ずとまよ”楽曲によって彩られた『好きでも嫌いなあまのじゃく』は、Netflixでの配信と同時に全国の劇場でも公開される。普段はイヤホンで聴いている音楽を、映画館のハイクオリティな音響空間のなかで全身をもって体感するというのも、映画主題歌を聴く楽しみだ。まずは劇場のスクリーンでスタジオコロリドの技術力によって生みだされた躍動感のある映像と“ずとまよ”の音楽のマリアージュを堪能し、それからNetflixで何度も繰り返し味わい尽くす。きっとこれまで経験したことのない格別の映画体験となることだろう。

文/久保田 和馬

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