『ボヘミアン・ラプソディ』が第76回ゴールデン・グローブ賞を席捲!受賞結果には順当とサプライズが混在
<ドラマ部門>作品賞に輝いたのは、『ボヘミアン・ラプソディ』。米国でも大ヒットしている作品だが、監督のブライアン・シンガーが途中降板しているなどのゴタゴタ感が、賞レースではどう出るかと注目を集めていた。また、<ドラマ部門>主演男優賞にも本命のブラッドリー・クーパーではなくラミ・マレックが選ばれており、音楽映画対決は『ボヘミアン・ラプソディ』に軍配が上がった。この結果を受けて、『アリー/ スター誕生』は軌道修正を、『ボヘミアン・ラプソディ』はアカデミー賞のノミネーションに向けて舵を切っていくことだろう。
ラミ・マレックの「どうもありがとう、ブライアン・メイ、そしてロジャー・テイラー。音楽に、そして世界に、僕らの間に確かなものと包容力があることを証明してくれた。フレディ・マーキュリー、生涯の喜びを与えてくれてどうもありがとう。美しいあなたが大好きです。これはゴージャスなあなたに捧げる賞です!」という短いが心がこもったスピーチは、この作品を愛した多くの人にも喜びをもたらしたことだろう。ちなみに、音楽が映画の中心にある『ボヘミアン・ラプソディ』『アリー/ スター誕生』が<ドラマ部門>で、人間ドラマを描いた『グリーンブック』が<ミュージカル/コメディ部門>というのはとても紛らわしいのだが…。
今年は<アニメ映画賞>に細田守監督の『未来のミライ』が、<外国語映画賞>に是枝裕和監督の『万引き家族』がノミネートされたこともあり、日本国内でも注目度が上がっていたのではないだろうか。結果は、下馬評通りの『スパイダーマン:スパイダーバース』(3月8日公開)がアニメ映画賞を、『ROMA/ローマ』が外国語映画賞を受賞した。どちらの受賞作品も評判と興行成績が良く、かつ街頭広告やテレビCMなどの広告出稿がふんだんに行われていた印象がある。特に『ROMA/ローマ』に関しては、Netflixがとうとう本気を見せたかのようだった。受賞式のテーブルでも、アルフォンソ・キュアロン監督の隣にはNetflixのCCO(コンテンツ最高責任者)のテッド・サランドスが座り、ヴェネチア国際映画祭から続くロビイング結果に満足気の様子が映っていた。
賞こそ逃したが、全米に生中継され世界中に報道されるゴールデン・グローブ賞にノミネートされた邦画2作は、明日から始まるアカデミー会員のノミネート投票に向けてひとつコマを進めたと言えるだろう。着席バンケット形式で行われるゴールデン・グローブ賞は、ボールルーム全体がロビイング会場である。受賞に向けてのロビイングだけではなく、2018年の映像業界を彩ったクリエイターたちが一同に会し、創造力が世界を分断する壁を越えていく場となっていることを願う。
主要部門の受賞結果は以下の通り。
作品賞<ドラマ部門> 『ボヘミアン・ラプソディ』
作品賞<ミュージカル/コメディ部門> 『グリーンブック』
監督賞 アルフォンソ・キュアロン(『ROMA/ローマ』)
主演男優賞<ドラマ部門> ラミ・マレック(『ボヘミアン・ラプソディ』)
主演男優賞<ミュージカル/コメディ部門> クリスチャン・ベール『バイス』
主演女優賞<ドラマ部門> グレン・クローズ(『天才作家の妻−40年目の真実−』)
主演女優賞<ミュージカル/コメディ部門> オリヴィア・コールマン(『女王陛下のお気に入り』)
助演男優賞 マハーシャラ・アリ(『グリーンブック』)
助演女優賞 レジーナ・キング(『ビール・ストリートの恋人たち』)
脚本賞 ニック・ヴァレロンガ、ブライアン・カーリー、ピーター・ファレリー(『グリーンブック』)
作曲賞 ジャスティン・ハーウィッツ(『ファースト・マン』)
主題歌賞 「シャロウ〜『アリー/ スター誕生』愛のうた」
外国語映画賞 『ROMA/ローマ』
アニメ映画賞 『スパイダーマン:スパイダーバース』
文/平井伊都子