中国とアメリカの“いま”が表れたサンダンス映画祭、マイケル・ジャクソンの衝撃ドキュメンタリーも物議
また、審査員が選ぶ賞には絡まなかったが、上映されると共に話題になったのは、NY出身の中国系アメリカ人映画作家ルル・ワンによる『The Farewell(原題)』(A24が配給権取得)。中国系移民のビリー(オークワフィナ)は、中国に住む祖母が末期ガンに冒され余命3か月と聞き、中国へ駆けつける。そこでは、日本に住むビリーのいとこの結婚式が開かれ、祖母に知られないように家族が集まっているのだった。
『クレイジー・リッチ!』『オーシャンズ8』(ともに18)といった作品に出演してきたオークワフィナも中国系アメリカ人の父親と、韓国系移民の母親を持つ女優であり、ワン監督及び主人公のビリーと同じような2つの祖国の文化衝突を経験している。移民の国アメリカのいまを表した作品だ。
同じく中国とアメリカの文化衝突を描いた『American Factory(原題)』(Netflixが配給権取得)は、GM倒産後のオハイオ州にできた中国系企業の工場における中国人経営者と従業員、そしてアメリカ人従業員を追ったドキュメンタリー。『American〜』のスティーブン・ボグナーとジュリア・レイシャート監督は、USドキュメンタリー部門監督賞を受賞している。トランプ政権の対中貿易摩擦が問題となっているいま、重要な作品と言えるだろう。USドキュメンタリー部門審査員グランプリに輝いた『One Child Nation(原題)』(アマゾン・スタジオが配給権取得)は、中国の“一人っ子政策”施行時代に作られた家族の姿を追った作品であり、中国のいまを捉えた作品が多く上映されたのも時代を表していると言えるだろう。
また、アマゾン・スタジオが14ミリオンドルで購入した『The Report』は、イラク兵士拷問捜査の特別調査官の実話を描いている。調査官役のアダム・ドライバーと、調査を主導したダイアン・ファインスタイン上院議員を演じたアネット・ベニングに賞賛が集まった。『マンチェスター・バイ・ザ・シー』(16)や『君の名前で僕を呼んで』『ゲット・アウト』(ともに17)といった作品がサンダンス映画祭から徐々に評判を高めてアカデミー賞まで登りつめていった過去例を考えると、これらの作品が2020年のオスカーをねらう存在となるのは想像に易い。