トラブルに見舞われた第91回アカデミー賞授賞式…アメリカ映画界が世界に示したもの、そして課題とは?
そして、今年のアカデミー賞では批評家vs観客という大きな対決も話題になった。『ボヘミアン・ラプソディ』は昨年アメリカで公開された時点では、批評家から酷評されていた。時系列がおかしい、フレディ・マーキュリーの人生を美化しすぎ、そしてブライアン・シンガー監督の性的虐待による降板…。だが、批評に反して興行収入は世界で8億ドル(約886憶円)以上を記録しており、観客がこの作品を愛したことが、賞レース後半の巻き返しにつながった。
主演男優賞を受賞したラミ・マレックは受賞後の記者会見で、「この映画には批評家のみなさんからいろいろな批評がありましたが、批評を寄せてくださったことに感謝しています。批評から多くのことを学びました。どんな内容であっても感謝します」と述べている。映画の批評は、監督と作品の顔である俳優たちに向けられがちで、ラミ・マレックが辛い日々を過ごしたうえでこうコメントできる心境にたどり着いたことが後押しとなり、主演男優賞をもたらしたのかもしれない。
視聴率が12%上昇した第91回アカデミー賞は成功だったのか。いくつも感動の瞬間があり、いまのアメリカを反映したような問題を考えるきっかけを与えられたのは、今後も変わり続けるアカデミー賞、変わり続ける映画界という意味で、成功と言えるのではないかと思う。来年にはまた新しい変化が訪れることを祈って。
文/平井伊都子
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