筒井真理子、深田晃司監督との再タッグ作の公開&映画祭出品に喜び!「どんな風に育っていくのか楽しみ」
『淵に立つ』(16)で第69回カンヌ国際映画祭「ある視点」部門審査員特別賞を受賞するなど国際的に高い評価を獲得している深田晃司監督が、同作で数々の映画賞に輝いた筒井真理子とふたたびタッグを組んだ『よこがお』(公開中)の公開記念舞台挨拶が27日、テアトル新宿にて開催。深田監督と筒井に加え、市川実日子、池松壮亮、吹越満が登壇した。
本作は、ある事件をきっかけに「無実の加害者」となった女の絶望と希望を描いたヒューマンサスペンス。訪問看護師として周囲から厚い信頼を得ていた市子は、ある日訪問先の大石家の娘で、中学生のサキが行方不明になる事件への関与を疑われてしまう。ねじ曲げられた真実と予期せぬ裏切りによって仕事も恋人も奪われてしまった市子は復讐を心に誓い、“リサ”という別の女性と成り代わってある男の前へと現れるのだが…。
上映終了後に大きな拍手が巻き起こった会場にキャスト陣と深田監督が姿を現すと、さらに大きな拍手が彼らを包み込む。ついに公開されたことに安堵の表情を浮かべる市子役の筒井は会場を見渡し「心待ちにしてくださったみなさんと一緒に過ごせることが本当に幸せです」とコメント。そして「この映画は不思議な映画です。いままで見たことのない映画だという感想もいただいていて、これからどんな風に育っていくのか本当に楽しみ」と期待を込めて語ると「時間があればここにいるみなさんと喫茶店に言って一人一人から感想を聞かせて欲しいくらいです」と茶目っ気たっぷりに微笑んだ。
さらに筒井は「プロットをいただいてから監督と雑談をした程度で、あとは監督にお任せしていました」と脚本が完成する前から本作に携わっていたことを明かす。「『淵に立つ』の時にも思いましたけど、今回監督は市子をどこまでいじめるんだろう?どこまで深みにはまっていくんだろう?と思いました」と振り返る筒井に、深田監督は「監督として幸せだったことは、脚本を書く前に筒井さんに出演をOKしてもらえたこと。自由なキャンバスを与えられたことです。筒井さんならここまで演じられるだろうと、何書いてもやってくれるだろうと思って、なんでも書けるという幸せな脚本開発の時間でした」と振り返った。
トークセッションでは筒井以外の3名のキャストから、作品を観た率直な感想と役作りの裏話が語られていく。「一番最初に思ったのが、台本より爽やかだったということです」と明かす市川が劇中で演じるのは、市子に密かな想いを寄せる大石家の長女・基子役。「繋げようとしても点と点が繋がらないので、理屈じゃなく市子さんを好きだって気持ちだけで演じようと思いました」と役作りについて語った市川は「劇中に流れる音楽が、耳よりも体全体に響く。流れているのか流れていないのかわからないくらいの音楽で気持ちがすっと…」と言葉を止めて考え込み「ちょっと言葉にできませんが、そんな感想でした」とはにかみながらまとめた。
一方で、和道役を演じた池松は「脚本の段階からものすごく綿密に、螺旋階段のように感情がぐるぐるとなっていて、すごく作り込まれた素晴らしい作品でした」と感想を述べると「この物語の世界に加担しないことで、一番加担できる方法を選びました」と自身の役作りを明かす。「深田監督の映画は無自覚や無意識を抽出する印象がある。なので本当にキャラクターとして演じないことや、ベクトルで感情を決めないこと。そうすることで、和道が被害者なのか加害者なのかわからないように演じられるのではないかと考えました」と語った。
また、市子の婚約者である戸塚役を演じた吹越は「僕にしては珍しくいい人の役だったんで…」とつぶやくと、「深田さんの現場での演出は繊細というか、本当に細かい演出で、なかなか信用できる監督だなと思いました」と明かし、印象に残っている演出として「頷くのをやめてくれ」「幸せを抱えている時は幸せを意識しないから、幸せそうにしません」という2つを挙げる。「とても素敵だなって思いました」と、にこやかに撮影現場を振り返っていた。
そして先日、第72回ロカルノ国際映画祭のコンペティション部門への出品が決まった本作。それについて筒井は「本当に歴史が深く、商業作品に偏らず自由な精神を持ち続けクオリティの高い作品を選んでくれる映画祭。とても光栄に思っています」と喜びを語り、深田監督も「自分が信頼している同世代の監督たちがロカルノで第一線の監督たちと向き合ってきたことを知ってから、早く行かねばと思っていた憧れの映画祭です。やっと行けるということで嬉しく思っています」とコメント。同映画祭は現地時間8月7日(水)から17日(土)まで開催されるとのことで、本作から届けられる吉報に期待したい。
取材・文/久保田 和馬