ノスタルジックな画風やストーリーが胸を打つ!深まる秋に観たい、珠玉の海外アニメーション3選<写真22点>
深まりゆく秋の気配。“芸術の秋”を楽しむなら、現在公開中の海外アニメーションをおすすめしたい。どこか懐かしくて優しいタッチの夫婦の物語に、黄金時代のパリがそのまま飛び出してきたようなユーモラスな一品、シンプルな画風で描かれる圧倒的な冒険譚など、魅力的な映像表現でつづられる心温まるストーリーをご堪能あれ。
激動の時代を生きた夫婦の愛の物語『エセルとアーネスト ふたりの物語』(公開中)
『エセルとアーネスト ふたりの物語』は、「スノーマン」「風が吹くとき」で知られるレイモンド・ブリッグズの絵本を原作とする物語。彼の両親の人生が、原作を忠実に再現した味わいのある手描きアニメーションで語られていく。1928年のロンドンで出会い、恋に落ちたメイドのエセルと牛乳配達のアーネスト。やがて迎える第二次大戦と戦後という激動の時代の中で、ふたりは一生懸命に働き、子どもを育て、老いていく。それは世界中のどこにでもある、ごく平凡な家族の肖像。笑顔ばかりではないけれど、何があっても寄り添い続けるふたりの姿は愛おしく、温かい。時の流れと共に変わりゆく調度品や、ラジオ・新聞を賑わせる当時のニュースに注目して観るのも楽しいだろう。
ベル・エポックのパリへタイムスリップ!『ディリリとパリの時間旅行』(公開中)
ニューカレドニアから密航してパリへやってきた少女ディリリ。謎の集団による少女誘拐事件のことを知ったディリリは、偶然に知り合った配達人オレルのつてで著名人から情報を集めて犯人捜しに精を出す。『ディリリとパリの時間旅行』は、19世紀末~20世紀初頭、芸術と文化が花開く黄金時代のパリにタイムスリップしたような気分を味わえる作品だ。ミッシェル・オスロ監督が4年間撮りためた写真をもとにした美しい風景の中で2人が出会うのは、画家のピカソやロートレック、化学者のキュリー夫人やオペラ歌手のエマ・カルヴェといった絢爛豪華な顔ぶれ。好奇心旺盛なディリリが彼らと繰り広げるユーモラスなかけあいには、思わず顔がほころんでしまう。
北極点を目指す貴族令嬢の大冒険『ロング・ウェイ・ノース 地球のてっぺん』(公開中)
『ロング・ウェイ・ノース 地球のてっぺん』は、TAAF(東京アニメワードフェスティバル)2016のグランプリ受賞作。故・高畑勲監督の評価も高く、受賞から3年経った今年、ようやく日本で一般公開と相成った。舞台は19世紀のロシア。貴族の子女サーシャは、北極探検に出たまま戻らない祖父の名誉を守るため、遭難した艦船ダバイ号を捜す旅へ。世間知らずのお嬢様に降りかかる数々の試練。しかし、いくつもの出会いを通じて強くなり、彼女もまた周囲の人々の心を変えながら、祖父が目指した北極点を目指す。主線のないシンプルな絵柄でありながら、豊かな色彩と圧倒的な表現力が観る者の心を離さない。苦難の果てにたどり着くその場所でサーシャを待つのは、絶望か、それとも…?
文/ほそいちえ