佐藤浩市が語る本音「映画モドキと本物の映画は違う」
日本映画界を代表する“主役級”のキャストが集結した話題作『64-ロクヨン-前編』(5月7日公開)。そのなかで圧倒的な演技を披露した主演の佐藤浩市にインタビューを敢行し、映画界の第一線で活躍してきた佐藤だからこそ語れる“映画作り”の極意を教えてもらった。
本作で警察の広報官・三上を演じた佐藤は、「撮影中、三上と対立する記者クラブを演じた瑛太たちに『俺を潰すつもりで来い』って発破をかけたんです」と舞台裏を打ち明ける。「良い作品を作るために、みんなの目指すべき方向性やベクトルを合わせたくて。役者の“気合い”みたいなものが画面に出てこなければ、映画をわざわざ2部作で作っても成立しないような気がしたんです」。
そんな佐藤の姿勢は、今は亡き名優・緒形拳の存在が大きく影響している。「昔、撮影所で緒形さんとすれ違った時に、『浩市、何やってんだ?』って聞かれて、『映画の撮影中です』って答えたら、『面白そうだな』ってすごく羨ましそうな表情をしながら緒形さんが仰ったことがあって。映画が大好きで、映画作りを全力で面白がろうとする緒形さんを見て、素敵な人だなって思いましたね」と佐藤は懐かしそうに振り返る。
「“なにか面白いことに参加しているんだ”っていう感情ってすごく大事だと思うんですよ。なので僕は、現場で常に自分が最前線に行くってことを意識しています。それで若い子達やほかのみんなに映画作りの面白さを示せたらいいなと。そしたら撮影もより張りが出ると思うし」と力強く語る佐藤。その姿はまさに、亡き名優・緒形の姿と重なって見える。
映画に対して強い思いを抱く佐藤だが、「自分で映画を撮ろうとは思わない」という。「映画なんか誰にでも撮れるものだから改めて自分が撮ろうとは思わない。予定を管理できる助監督と弁当を手配できる制作部がいれば、バカでも映画なんか撮れるんですよ」と笑いつつも、続けて佐藤から映画への熱い思いが飛び出した。
「ただ言っとくけど、映画と映画モドキみたいなものは全く違うんですよ。ちゃんと真剣に映画を撮っている監督もいれば、誰にでも撮れるような映画モドキを作っている人もいる。あぁ~この話どんどんヤバくなってるな(笑)。結局、映画であるためには、作り手が血反吐をはきながら作らなければいけないんです」。
いつも真っ向勝負で映画と向き合う佐藤浩市。“映画作り”を面白がりながら最前線に立ち続ける佐藤の演技は、これからも多くの人々を魅了し続けるに違いない。【取材・文/トライワークス】