第89回アカデミー賞候補、サプライズのキーワードは「大物」
現地時間1月24日、第89回アカデミー賞のノミネート結果が発表された。今年もさまざまな驚きがあったが、NYタイムズ紙、ヴァニティ・フェア誌、E!テレビなどを参考に大きなサプライズをまとめてみた。
まずは、快進撃を続けている『ラ・ラ・ランド』(2月24日公開)。1月8日に行われた第74回ゴールデングローブ賞(以下GG賞)でも賞を総なめにしたが、レトロ・ロマンのミュージカル映画であることから、アカデミー賞では同じようにはいかないと考えられていた。しかしふたを開けてみれば、歴史に残る13部門14ノミネートで、これまでのオスカーが好む作風から考えると、予想以上の結果に。
また主演男優賞では、GG賞同様にオスカー会員が好む人物で、実在の人間を描いたヒット作『ハドソン川の奇跡』(16)のトム・ハンクスや、『The Founder(原題)』のマイケル・キートンが選ばれず、『はじまりへの旅』(4月1日公開)のヴィゴ・モーテンセンが選出されるサプライズ。
さらに今作での実力は折り紙付きだが、2件のセクハラ疑惑が浮上したままになっており、かつ兄はアカデミー会員が嫌うベン・アフレックということもあってノミネートを懸念されていたケイシー・アフレックが選ばれた。
主演女優賞では、実力派と言われながら一度もノミネートされていなかったフランス人女優イザベル・ユペールがノミネートされたことは、GG賞の受賞と共に驚きをもって伝えられている。一方で『メッセージ』(5月19日公開)が8部門でノミネートされたにもかかわらず、オスカーに5度ノミネートされている常連エイミー・アダムスが落選。
ほかにもタラジ・P・ヘンソンの落選、4度オスカーにノミネートされているベテラン女優のアネット・べニングが落選し、メリル・ストリープが20回目のノミネートを果たしたことも意外だったと伝えられている。
各賞で1本化しやすいはずの助演男優賞と助演女優賞について、女優賞はGG賞と全く同じメンバーがノミネートされているのにもかかわらず、男優賞についてはGG賞で助演男優賞を受賞した『NOCTURNAL ANIMALS(原題)』(秋公開)のアーロン・テイラー=ジョンソンではなくマイケル・シャノンがノミネートされたこと、ヒュー・グラントがノミネートされなかったことは驚きだ。
また、暴力や差別発言でハリウッドから遠ざかっていたメル・ギブソンが『ハクソー・リッジ(原題)』(夏公開)で、ガース・デイビス監督やマーティン・スコセッシ監督、会員好みのクリント・イーストウッド監督、そして主演男優賞にはノミネートされたが『Fences(原題)』でメガホンもとったデンゼル・ワシントンを差し置いて、監督賞にノミネートを果たした。
加えて同作が8部門にノミネートされていることも、「ベン・アフレックのように一度スキャンダルを起こすと復活が許されないオスカーで、メルは見事に復活を果たした」と取り上げられている。
作品賞では、『Hidden Figures(原題)』がノミネートされた一方で、『ハドソン川の奇跡』は音響編集賞の1部門、スコセッシ監督作『沈黙-サイレンス-』(16)も撮影賞の1部門のみのノミネートと、メイン部門で総スカンを食らったこともメディアで報じられた。
『ローグ・ワン/スター・ウォーズ・ストーリー』(16)、『スター・トレック BEYOND』(16)、『スーサイド・スクワッド』(16)などがメイン部門以外でのノミネートなのは、オスカーの特徴から言ってサプライズではない。
しかし大ヒット作『デッドプール』(16)が無冠だったことは、ある意味驚きであると共に、協会の体質が変わっていないことを意味しているとして、落胆の声があがっている。
一方でGG賞と同様に、『ファインディング・ドリー』(16)がノミネートされなかったことは、会員などの入れ替えによって起きた、ビッグサプライズと言ってよさそうだ。
相対的に大物や大作が姿を消し、小粒な秀作が揃った今回のノミネート結果で、さらなる視聴率の低下を懸念されているが、白すぎない候補が増えたことで、新たな視聴者を取り込めるのかに注目が集まっている。【NY在住/JUNKO】