過去の受賞作品から見る「SKIPシティ国際Dシネマ映画祭」歩み…次なる出身監督の注目作は?
今年で17回目を迎える若手映像クリエイターの登竜門、SKIPシティ国際Dシネマ映画祭。2020年は9月26日(土)~10月4日(日)で開催され、その歴史で初めてオンライン配信での上映を実施する。これまで国内外で活躍する映画監督を数多く輩出してきた同映画祭より、過去の受賞作品や受賞者を振り返ってみよう。
2004年に埼玉県川口市で誕生した本映画祭は、現在は一般的になったデジタルシネマ(デジタルで撮影・編集された映像作品)にいち早くフォーカスした国際コンペティション映画祭。国際部門と国内部門があり、長編作品を対象にした国際コンペティションでは世界中から応募された作品を、長編部門と短編部門の2部門で構成される国内コンペティションは、日本の若手映像クリエイターの作品を厳選して上映してきた。
“SKIPシティアワード”初代受賞者の白石和彌
長編部門を海外と国内の2カテゴリーに分け、積極的に国内の長編作品を取り上げ始めた2009年。この年には国内作品を対象に、今後の長編映画制作に可能性を感じる監督に授与する“SKIPシティアワード”も新設されている。そして、その初代受賞者となったのが、『ロストパラダイス・イン・トーキョー』(09) の監督、白石和彌だった。
『孤狼の血』(18)、『ひとよ』(19)などいまや日本を代表する映画監督となった白石監督の長編デビュー作である『ロストパラダイス・イン・トーキョー』。知的障害を持つ兄とその弟、自分で性処理ができない兄のために弟が招いた地下アイドルとデリヘル嬢という2つの肩書を持つ女性の交流が描かれる。社会の片隅でもがきながら生きる3人を温かい視点で見つめた作品で、当時の審査員からは「社会からはみだした3人を主人公にした、現代のおとぎ話。お姫様が娼婦でもあり、王子たちを助けるというストーリーが変わっていて美しい。娯楽性もありながら、素朴。製作の苦労を観客に見せないようにしている」と絶賛された。