終末世界を生き延びろ!「ポストアポカリプス」を描いた映画10選
新型コロナが感染拡大の兆しを見せていた今年の春、ある事態が起きていた。アルベール・カミュの「ペスト」や小松左京の「復活の日」といった小説が売れ、動画配信サービスでは映画『コンテイジョン』(11)などの視聴回数が激増。感染症の恐怖を描いた作品が再び注目を集めたのだ。未知の脅威に直面した時、人々はフィクションからも現状を俯瞰し見つめようとする…ということなのだろうか。
そこで今回、危機的状況に陥っても生きようとする人々が描かれている究極のジャンルということで、「ポストアポカリプス」系映画10作品をご紹介。いずれも文明が崩壊し人類が絶滅の危機に瀕している映画であり、描かれ方や原因も様々。もちろんフィクションだし、さすがに終末世界は行き過ぎた発想ではあるが、そこで繰り広げられる人間模様は、いまの私たちに何らかの示唆を与えてくれるかもしれない。
『クワイエット・プレイス』(18)
“音を立てたら即死”という設定でスマッシュヒットを記録したホラー。音に反応して人間を襲う“何か”によって人間が死滅した世界で暮らす一家が描かれる。“何か”とは、宇宙から飛来した鋭敏な聴覚を持つ謎の怪物なのだが、音を立てたらすぐにやってきて殺されてしまうため、映画全編が静寂に包まれている。そんな中、音を立てずにいられないシチュエーションが次から次へと襲いかかるので、観ているこちらもいつの間にか息を殺してしまう。本作の続編となる『クワイエット・プレイス 破られた沈黙』が2021年公開予定。一家以外の生存者が登場するなどの展開もあり、世界についての新たな事実が明かされるかもしれない。
『28日後...』(02)
ダニー・ボイル監督によるSFホラー。人間の理性を破壊し、凶暴化させるウイルスの蔓延によって崩壊したロンドンが舞台になっている。今でこそ見慣れた感のある“走るゾンビ(感染者)”を一般的にした作品であり、アスリート級の全力疾走で追いかけてくる感染者のインパクトもかなりのものだが、目覚めたら無人の病院にいて、街がゴーストタウンになっていた…という導入が印象的。一部の人間が海外に脱出する一方で取り残され途方に暮れる者たちの絶望、ラジオ放送の呼びかけで生存者を集めていた軍人の裏切りなどの混沌とした無法状態の描写など、極限下での人としての振る舞いについて考えさせられる。続編の『28週後...』(07)では、感染がヨーロッパ大陸にまで拡大しているさまが描かれた。
『アイ・アム・レジェンド』(07)
リチャード・マシスンによる小説「I Am Legend」の3度目の映画化作。小説はゾンビ映画の生みの親である故ジョージ・A・ロメロ監督にも影響を与えているが、厳密には“吸血鬼”であり、本作に登場するのもいわゆるゾンビではない。がんの治療薬として開発された薬が突然変異を起こし、ウイルス化。その蔓延により人類の90%が死滅してしまった世界で、一人生き残った科学者ネビル(ウィル・スミス)の戦いを描く。序盤の、荒廃した無人のニューヨークのビジュアルは圧巻で、朽ちた車の列、ぼうぼうに伸びた雑草、野生化し駆け回る動物たち…などは本当にニューヨークでロケを行ったから出せる迫力がある。時代設定が公開当時から離れていない(5年後)ということもあり、“見慣れた日常風景”が壊れてしまうことの恐ろしさも強く感じられる。
『ウォーターワールド』(95)
近年はユニバーサル・スタジオ・ジャパンのアトラクションとして認知されている印象が強い、ケヴィン・コスナー主演のSF超大作。地球温暖化により海面が上昇し、陸地がなくなってしまった世界で、唯一の陸地“ドライランド”を目指す人間たちが描かれる。1億7500万ドルもの莫大な製作費が投入されたものの、批評家から酷評され、興行的にも失敗に終わってしまったが、海上に築かれた人工の岩礁での生活、土が貴重品として取引され、“水”が人類の生存の脅威になるという設定はおもしろい。
『ザ・ウォーカー』(10)
デンゼル・ワシントン主演の本作では、大規模な最終戦争によってかつての社会秩序が崩壊した近未来が舞台となっている。主人公の“ウォーカー”ことイーライは、世界にたった一冊だけ残された本を携えて旅をしており、その本を狙う者たちとの戦いが展開する。崩れかけた高速道路、道端に乗り捨てられた車といった荒涼としたビジュアルは他の作品でも散見されるが、「すべての文化的なものが喪われてしまったら?」という、“文明の価値”を問う視点が独特だ。