難役に挑むため、30センチ以上の断髪を決断…女優・北川景子の足跡を振り返る
衝撃作『ファーストラヴ』で魅せた、新境地とは?
作品を重ねるごとに着実に進化を続けてきた北川だが、『ファーストラヴ』では本心をまったく見せない女子大生の被告との関わりを通して、自身の暗い過去と向き合う公認心理師を演じている。
不安定な心理状態の環菜に引き込まれるようにして、長年心の奥底に秘めていた父親との記憶を呼び起こす由紀。自分自身と環菜という存在、現在と過去、そして我聞と迦葉といういくつもの対比のなかで徐々にかき乱されていく複雑な心情を、北川は持ち前の演技力で体現していく。
そんな北川の演技について、夫である真壁我聞役を演じた窪塚洋介は「あの細い体のどこにそんなエネルギーがあるんだと思ったし、この人は本当の大女優になっていく人なんだろうなと思いながら撮影をしていました」と驚愕したことを明かす。
北川自身も「生半可な気持ちでは絶対にやらないと決めていました」と語るほど、強い想いを持って由紀という役柄に臨んだようで、原作の由紀の設定に合わせ、自らの発案で髪の毛を30センチ以上カット。デビュー以来初のショートヘアにして、役柄により深いアプローチを試みた。
メガホンをとった堤監督もまた、撮影現場での北川の様子について「いろいろな意見やアイデアを出してくれて、どのテイクも誠実にやり切ってくれました」と太鼓判を捺す。
さらに「非常に役にのめり込む方だと思うし、この作品をご自身の代表作にしたいんだと言う熱を感じられてうれしかった。もともと頭の良い方なので、とにかく脚本を読み込んで現場にいらっしゃったのも印象的です」と振り返り、「撮影の合間にセットの裏で『ここの感情のキレ具合は30%くらいですね』などと理論的に演技プランを練り、アウトプットの能力も抜群に高い。素晴らしい主役で、この作品にとって財産だったと思います」と、賛辞を惜しまない。
北川を筆頭に、中村倫也や窪塚洋介、芳根京子といった日本映画界を代表する俳優たちの演技合戦が見どころとなる本作は、北川にとって新たな代表作となることだろう。是非とも劇場で、その渾身の演技を堪能してほしい。
文/久保田和馬