命日に振り返る、チャドウィック・ボーズマンの軌跡…差別や偏見と闘い続けた生涯
男女の賃金格差を是正するため、自らのギャラをカット
そして彼の最後の劇場公開作である『21ブリッジ』が、現在デジタル先行配信されている。本作は、ニューヨークのマンハッタンに架かる21の橋をすべて封鎖するというシンプルかつ大胆な設定の下、警官殺しの強盗犯に迫る追跡劇が繰り広げられるクライムアクション。
ボーズマン演じる主人公の刑事アンドレは、犯人を射殺してしまった過去を抱えており、苦悩しながらも良心に従い、正しい道を歩むことを心に誓う、ブラックパンサーを思わせるような正義漢。麻薬捜査官の女性フランキー(シエナ・ミラー)とともに犯人を追っていくうち、巨大な陰謀に打ち当たり…と、話が一転二転、スリリングに展開していく快作だ。
脚本に惚れ込み、プロデューサーとしても本作に情熱を傾けていたボーズマンの人間性を物語るのが、自らオファーしたというミラーとのエピソードだ。当時、ミラーは娘との時間がほしいと思っていたため、希望した金額を下回るようなら役を断ろうと考えていると、案の定スタジオは希望を下回る金額を提示してきたそう。するとボーズマンは「君の価値に見合った金額を受け取るべき」と言い、自らのギャラを削って差額を支払ったというのだ。
若手時代、初めて主役を手に入れた際に、黒人に対するステレオタイプに満ちたキャラクターの改善をプロデューサーに相談したところ、その役から降ろされるという経験もしており、業界にはびこる偏見に苦悩したというボーズマン。それを乗り越えて人種差別や男女格差といった不平等に対し、毅然と立ち向かった彼の想いは、遺された作品たちが必ずや後世に語り継いでくれるだろう。
文/サンクレイオ翼
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