草笛光子が明かす、45年目の『犬神家の一族』秘話。高峰三枝子に施した“死に化粧”

インタビュー

草笛光子が明かす、45年目の『犬神家の一族』秘話。高峰三枝子に施した“死に化粧”

天海祐希主演作『老後の資金がありません!』(公開中)でのチャーミングなセレブ姑役も話題となった女優、草笛光子。御年88歳だが、美しく伸びた背筋や凛とした佇まいには、ベテラン女優ならではの風格を感じさせる。そんな草笛が恩人として敬愛するのが、「金田一耕助」シリーズはもちろん、数多くの名作を遺した巨匠、市川崑監督だ。折しも角川映画45年記念企画「角川映画祭」で『犬神家の一族』4Kデジタル修復版が公開中ということで、草笛に貴重な当時の撮影秘話を伺った。

湖畔にそびえる犬神邸に次々と発生する怪奇な連続殺人事件に挑む金田一耕肋(石坂浩二)の活躍を描く『犬神家の一族』
湖畔にそびえる犬神邸に次々と発生する怪奇な連続殺人事件に挑む金田一耕肋(石坂浩二)の活躍を描く『犬神家の一族』[c]KADOKAWA1976

市川監督が石坂浩二を主演に迎え、横溝正史の同名小説を映画化した1976年版の『犬神家の一族』は公開当時大ヒットし、大いに反響を呼んだ。その後続いて、同座組での「金田一耕助」シリーズがあと4本作られ、2006年には市川監督のセルフリメイク版『犬神家の一族』も制作された。草笛は、『犬神家の一族』4Kデジタル修復版を試写で観賞したそうで「懐かしかったです。すごく力強くて良い映画だなと改めて思いました」と感想を述べた。

『犬神家の一族』は、名探偵の金田一耕肋が、湖畔にたたずむ犬神邸で起こる連続怪奇殺人事件の謎に迫っていく。草笛は犬神家の三女・梅子役を演じたが、石坂をはじめ、そうそうたる豪華キャストについて「腕のある方ばかり。しかも皆さん、愛嬌があって愉快でした」としみじみと目を細める。

病床の犬神佐兵衛の下へ駆けつけた犬神家の人々
病床の犬神佐兵衛の下へ駆けつけた犬神家の人々[c]KADOKAWA1976

「でも、多くの方があの世へ逝ってしまったので、すごく寂しいです。私たち犬神家の三姉妹だって、もうおふたりはいらっしゃらないし」と、長女・松子役の高峰三枝子や、次女・竹子役の三條美紀(三条美紀)を偲んだ。

「高峰さんが亡くなった時、最後のお化粧をさせていただきました」

【写真を見る】草笛光子、島田陽子、坂口良子…艷やかな色香が漂う『犬神家の一族』の美女たち
【写真を見る】草笛光子、島田陽子、坂口良子…艷やかな色香が漂う『犬神家の一族』の美女たち[c]KADOKAWA1976


なかでも昭和を代表する大女優、高峰とのエピソードが実に味わい深い。「高峰さんとは撮影でずっと一緒でした。私は小学生になる前から高峰さんの歌をよく口ずさんでいたので、そのことをご本人にお伝えしたら、『そう?』とにっこり。また、高峰さんが亡くなった時、最後のお化粧をさせていただいたんです」と告白する。

1990年の5月、高峰の訃報を受けた草笛はすぐに高峰邸へと向かったが、それは『犬神家の一族』の撮影中に交わした約束を果たすためだった。「『犬神家の一族』で三姉妹が顔を白塗りにして、犬神佐兵衛の愛人、菊乃をいじめるシーンがありましたでしょ?その時、私のお化粧が上手だと言ってくだって、高峰さんが『今度、私が舞台に出る時は、お化粧をしてね』とおっしゃったんです」。

湖から突き出た犬神佐清の足が衝撃的!
湖から突き出た犬神佐清の足が衝撃的![c]KADOKAWA1976

草笛はその時の約束を忘れてはいなかった。「ちょうど舞台で地方のホテルに泊まっていた時、テレビで高峰さんが亡くなったことを知りました。それで『お化粧をしてあげなくちゃ』と思い、大急ぎで化粧品を持って高峰さんのご自宅に伺いました。まだ亡くなったばかりで本当にきれいなお顔でした。私は高峰さんに口紅や頬紅を付けましたが、きっと楊貴妃はこんな顔をしていたんじゃないかと思えるくらいに美しかったです。『約束どおり、私がお化粧をしましたよ』とお伝えしました」。

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