『DIVOC-12』上田慎一郎監督、映画は“心のワクチン”「現実を変える力を持っているものだと信じている」
新型コロナウウイルス感染拡大による緊急事態宣言、まん延防止重点対応の映画館休業・時短営業要請により、十分な配給や興行ができなかった映画を集めて再上映する「COME BACK映画祭ーコロナ禍で影響を受けた映画たちー」が、池袋のMixalive TOKYO地下2階にあるHall Mixaで開催中だ。12月5日には映画『DIVOC-12』(21)の上映が行われ、舞台挨拶に上田慎一郎監督が登壇。「映画は心のワクチン」とコロナ禍で確かめた想いを明かした。
『DIVOC-12』は、新型コロナウイルス感染症の影響を受けているクリエイター、制作スタッフ、俳優が継続的に創作活動に取り組めることを目的として製作されたソニー・ピクチャーズによるオムニバス映画。『カメラを止めるな!』(17)の上田慎一郎、『新聞記者』(19)の藤井道人、『幼な子われらに生まれ』(17)の三島有紀子らが中心となり、新人を含めた9名の監督が参加。上田監督チームは“感触”、藤井監督チームは“成長への気づき”、三島監督チームは“共有”をテーマに掲げ、12の物語を紡いだ。この日のMCは、映画系YouTuberの沖田遊戯が務めた。
上田監督が撮りあげたのは、映画館を舞台にユメミ(松本穂香)という女性が語りだす、波乱万丈の半生を描く『ユメミの半生』。上田監督は本作を手掛けるにあたって、室内スタジオに大型LEDディスプレイを設置して、天候や時間に関係なく撮影が進められる「バーチャルプロダクション」という新しい技術を使っていることを明かし、「本作の撮影では、基本的にロケ地には行っていないです。巨大なLEDの前で全員が芝居をしている。LEDにロケ地のCGセットを映写して、その前で役者が芝居をする。それを同時に撮影する」と現場の様子を紹介。
国内でバーチャルプロダクションを使った撮影は本作が初めてだという。上田監督は「ロケ地もたくさん必要になる作品なので、“どうやって撮るんだ”という問題もあった。バーチャルプロダクションを使えば、コロナ禍においてロケ地移動もなく撮影できる。そして最新技術に挑戦することも大事だと思った。いままでの映画史を語りつつ、本作が映画の未来につながる一歩になればと思い、まだ(国内では)誰も使っていないその技術を使おうと思った」と語り、撮影は「とても楽しかった」と充実感をみなぎらせていた。
コロナ禍において上田監督は、エンタテインメントの力について思いを巡らせることも多かったという。「映画制作ができなくなったり、映画館が止まってしまったりして、失って初めて気づくことも多かった。映画って、観る食べ物。映画館に1か月も行っていないと、ちょっと心の栄養分が足りていないなという感じになってくる。クリエイターにとっては映画を作ること、映画好きにとっては観ることが必要」と熱弁し、「僕にとっては三大欲求のもうひとつに入れてもいいくらい」とにっこり。「コロナ禍で延期になったり中止になったりする映画があるなかで、“作る”という場を与えてもらえて、自分たちも救われた。やっぱり“作りたくなるものなんだ”とも思った」と本作に携わるなかで、ものづくりへの情熱を改めて確認したという。
最後に上田監督は「僕にとっては、映画はワクチンのようなもの。心のワクチン」と告白。「人によって効く薬、効かない薬があるように、人によって効用が違うという感じもある。映画やエンタテインメントは心を整えたり、柔らかくしてくれたりする。フィクションではあるけれど、現実を変える力を持っているものだと信じている」と力強く語り、会場から拍手を浴びていた。
取材・文/成田おり枝
■開催期間 2021年12月4日~2021年12月19日(日)
■開催会場 Hall Mixa(Mixalive TOKYO地下2階)
■会場席数 144席
■販売価格 全作品700円(税込)/全席自由席
■販売場所
【インターネット】ローチケWEB https://l-tike.com/comeback-movie-festival
【コンビニ】ローソン・ミニストップ店舗内のLoppi
【当日券】各回20 枚限定/各公演開場時刻より、会場Hall Mixa 受付にて販売
※当日券は諸般の事情により販売しない場合がございます。ご了承ください。
※未就学児のお客様はご入場できません。ご了承ください。
【公式サイト】https://comeback-movie-festival.jp