安彦良和監督を支えた“3人の監督”がひも解く、40年ぶりに蘇らせた「ガンダム」への想い

インタビュー

安彦良和監督を支えた“3人の監督”がひも解く、40年ぶりに蘇らせた「ガンダム」への想い

「ガンダム自体にも描き方で表情が出てくる」(田村)

田村総作画監督は、安彦監督の描く"線"の強弱が悩みどころだったと話す
田村総作画監督は、安彦監督の描く"線"の強弱が悩みどころだったと話す

作画の要となる総作画監督を務めたのは、「機動戦士ガンダム THE ORIGIN 前夜 赤い彗星」にも参加している田村篤。今作で田村総作画監督は「個人的に悩んだのは線なんです」と、作画へのこだわりを明かす。「安彦さんの線って、いまのアニメーターと違うんです。昔のアニメって、鉛筆でそのままセルにトレスしていたのですが、いまはデジタルペイントなので線の強弱を付けてはいけないことになって。いまのアニメーターは強弱を付けない訓練をしているものだから、当時は当たり前だった表現をなかなか再現できないんです。そこがもう悩みどころで。100人を超えるスタッフで描いていますから、そこで線の描き方を共有するのは不可能で、そこをどう見せるのかを撮影の処理とかも含めながら考えていました。あの気分をどう再現するか、あるいはやらないのかみたいなさじ加減が難しかったですね」。

安彦監督の絵コンテに合わせると、3Dモデルでは再現できないポーズも
安彦監督の絵コンテに合わせると、3Dモデルでは再現できないポーズも[c]創通・サンライズ

近年のアニメで細く均一な線が求められることが多いのは、きめ細かく解像度の高いテレビやスマホ、タブレットといったデバイスへの対応という面もあるが、CGモデルとの相性という部分も大いにある。今作のモビルスーツもCGで作られているが、そこにはアニメならではのテクニックが使われている。「CGクリエーターの皆さんにいろいろ頑張っていただいて、一歩新しいモビルスーツの表現ができたんじゃないかと思っています。というのも、安彦さんの絵コンテに合わせると、絵コンテの間の動作に立体として作られている3Dモデルでは、そのまま動かしては絶対にできないポーズが生じてしまうんです」。

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【画像を見る】『機動戦士ガンダム ククルス・ドアンの島』に込められた、テレビ放送時を彷彿させるシーンの数々![c]創通・サンライズ


今作ではその難しい動作を「すごくデフォルメをして作ってもらっています」と説明する。「極端な話だと、ガンダムの顔も左右対象にはしないでほしいとか。そういうところを意識することで、モビルスーツにも表情が出てくると思います。かといって、デフォルメしたから違和感が出るのではなく、むしろ格好良い動作になるので、そういった部分まで考え組み立てられている安彦さんの絵コンテは本当にすごいんです。またCGによるエフェクトは、安彦さんの作品の演出に寄せたエフェクトを作画でつけています」。


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