躍進し続ける道枝駿佑!『今夜、世界からこの恋が消えても』での繊細な表情から目が離せない
透の心の機微を丁寧に表現した卓越した“表情づかい”
毎作品、とてつもない伸びしろを見せる道枝が満を持して映画初主演に臨んだのが、「セカコイ」こと『今夜、世界からこの恋が消えても』である。一度眠ると、起きていた間の出来事の記憶が失われてしまうヒロイン、真織のために毎日、思い出を積み重ねていく主人公の透。「消えた初恋」で共演した福本と抜群の相性で、本気の恋をしないと誓いながら、本物の恋に落ちてしまう2人を演じている。
ここでも道枝の巧みな表情づかいは健在。無色透明なおもしろ味のない日常を過ごしていた透が、真織と付き合い、彼女を知っていくうちに生活に光が差し、彩られていく様子が緩やかに変化する面持ちから見て取れる。いたずらに加担させられ、不本意に告白する「付き合ってもらえませんか」の仏頂面。デートを重ねるうち見せるようになる、こぼれるような笑顔。極めつけは心を許した相手にしか見せないであろう、バスでの居眠り姿。なにわ男子のなかでも「寝相が独特」とネタにされている彼らしい寝姿は、何度も繰り返し見たい無防備な愛らしさだ。
真織にどんどん心を開放し、いろんな面を見せる透。真織が見つめる先にある、彼の面差し一つ一つが忘れがたく、記憶を焼きつけようとする真織と同じように観客の心にも鮮やかに刻まれていく。
国宝級イケメンでありながら、コメディでは変顔も厭わず、多種多様な表情をテンポよく繰り出す。一方で、しっとりしたラブストーリーでは心の機微を感じさせる、繊細な演技でじっくり見せる実力の持ち主。まだまだ育ち盛りの道枝。今後はどんなジャンルでどういった表情を見せてくれるのか、期待が高まるばかり。
文/高山亜紀
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