主人公はかつての悪役!中年ダメ男の成長がエモい「コブラ会」の懐古趣味にとどまらない魅力
9月9日よりNetflixにてシーズン5が配信されたばかりの人気ドラマ「コブラ会」。本作は80年代に大ヒットした「ベスト・キッド」シリーズの主人公ダニエル・ラルーソー(ラルフ・マッチオ)とライバルのジョニー・ロレンス(ウィリアム・ザブカ)のその後を同キャストで描き、因縁の大会から30年以上が経ち大人になった2人が空手の指導者として再び火花を散らすという1作だ。
ここ数年、ヒット作の続編やリブート、スピンオフが大量に作られ、一つの金脈コンテンツとなっているなか、オリジナルの人気に肖った懐古趣味な作品になることもしばしば…。しかし「コブラ会」は、単なるオールドファンに向けただけの作品ではなく、むしろ過去の映画シリーズの価値すら昇華させるような1作となっている。シリーズも終わりに近づき盛り上がりを見せているいま、改めてその魅力を紹介していきたい。
かつての悪役が価値観を改める…中年オヤジの“成長”物語がアツい!
数多くのキャラクターにスポットが当てられる「コブラ会」だが、そのなかで主人公となるのが『ベスト・キッド』(84)でダニエルのことをいじめていた悪役のジョニー。34年前の空手大会決勝でダニエルに負けたことで人生が狂ったジョニーは酒に溺れる惨めな生活を送っていた。そんなある日、不良グループにいじめられている近所の少年ミゲルを助けたところ、空手を教えてほしいと頼まれ、空手道場「コブラ会」を復活させることになる。
いじめられっ子のミゲルが空手と出会ったことで自信をつけていく負け犬の逆転劇や、子どもたちの恋愛模様といった『ベスト・キッド』でおなじみの要素はもちろん、憎きコブラ会の復活を懸念し、ミヤギ道空手を再興させ対抗してくるダニエルをはじめとする過去の因縁が絡み合いながらストーリーは進んでいく。
様々なドラマが繰り広げられるなかでも最大の魅力はジョニーの存在だ。仕事に就けばクビになるその日暮らしを繰り返し、することといえば80sミュージックを聴きながら愛車で爆走し、家でビールを飲むというワルを追求するだけ。スマホやパソコンの使い方もわからない80年代の青春で時が止まってしまったイタい中年オヤジだ。
本作はそんなジョニーを時代遅れと突き放さず、彼の再生と成長を描いていく。時代について行けていないジョニーは、移民のミゲルを差別的に扱ったり、オタクな弟子たちをバカにするような言葉を浴びせたりと保守的なマッチョイズムを炸裂させ、生徒から呆れられる始末…。
しかし、必死に強くなろうとする子どもたちの姿に自身の子ども時代を重ね合わせ、「卑怯な手を使ってでも勝つ」という自分を苦しめた教えを繰り返すまいと良い先生を目指し、自分なりの道場の在り方を模索していく。
ミゲルをはじめとする教え子たち、そしてライバルのダニエルや自分のことを憎む息子のロビー、さらには彼の前に再び現れたかつての師匠クリーズなど、様々な人物や自分を縛りつける過去と向き合い、苦悩していくジョニー。マッチョな考え方を180度改めるわけではないが、彼なりの考えを懸命に巡らせ、失敗を繰り返しながらも少しずつ価値観を改めていく、そんな不器用なりに成長していく姿がなんとも心に刺さるのだ。