主人公はかつての悪役!中年ダメ男の成長がエモい「コブラ会」の懐古趣味にとどまらない魅力
人間味あるキャラクターたちが生みだす数々のドラマ
『ベスト・キッド』では典型的なヒールとして登場したジョニーの様々な側面を描くことで、単なる悪ではなく、かといって100パーセント善とも言い難いような人間味あるキャラクターに昇華してみせた「コブラ会」。
このことは関してはダニエルも同じだ。カーディーラー会社を経営し、リッチな家で妻と2人の子どもに囲まれた勝ち組生活を送るダニエルは、大人になってもなおミスター・ミヤギの教えを守る穏やかな人間。しかし、過去のトラウマは消えておらず、ジョニーがコブラ会を再興したと聞くと、ミヤギ道空手を復活させてまで対抗しようとしていく。
善良な人間ではあるものの、ジョニーの教える空手を一方的に悪だと決めつけるなど、自分が信じるものこそ常に正しいと思い込むような危うさを帯びたダニエル。息子のいじめの件で学校に呼び出された際には、息子が被害者である前提で話を始める毒親ぶりを発揮。妻の助言を無視し、会社そっちのけで空手にのめり込んではトラブルをもたらすなど、心の平穏がガンガン崩れていく姿がなんとも人間的だ。圧倒的な善玉として描かれていた『ベスト・キッド』とは違った印象を受ける。
そしてシリーズ最大の悪役として登場するジョン・クリーズ(マーティン・コーヴ)に至っても、ベトナム戦争での苦い過去が描かれており、「先に打て!強く打て!情け無用!」という教えやどんな手を使ってでも勝ちにこだわるワケ、一番弟子であるジョニーへの思いなど、冷徹非情な人間の心情が明かされ、映画シリーズで一面的な描かれ方をしたキャラクターに深みを与えている。
また、オタクな子どもたちが、強くなったことでその力に酔いしれて残虐な一面をのぞかせ、対立が生じるなど、善と悪では割り切れない人間の性がドラマを生みだしてくのだ。
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