原恵一と辻村深月が語り合う、藤子・F・不二雄から学んだ“ファンタジーと日常”「ものづくりはバトンリレー」|最新の映画ニュースならMOVIE WALKER PRESS
原恵一と辻村深月が語り合う、藤子・F・不二雄から学んだ“ファンタジーと日常”「ものづくりはバトンリレー」

インタビュー

原恵一と辻村深月が語り合う、藤子・F・不二雄から学んだ“ファンタジーと日常”「ものづくりはバトンリレー」

2018年本屋大賞を史上最多得票数で受賞した辻村深月のベストセラー小説を、『クレヨンしんちゃん 嵐を呼ぶモーレツ!オトナ帝国の逆襲』(01)や『カラフル』(10)の原恵一監督が劇場アニメ化した『かがみの孤城』(公開中)。“鏡の中の城”に迷い込んだ少女の成長を描くファンタジーミステリーであると同時に、“自分の居場所探し”をリアルかつ繊細な心理描写と共に描き、子どもから大人まで幅広い世代の胸を打つ感動作として完成した。日常を軸としたファンタジーを得意とする原と辻村が、藤子・F・不二雄から受けた影響や、お互いに寄せるシンパシーを明かした。

「原さんがチーフディレクターをされていた『エスパー魔美』が大好きなんです」(辻村)

原恵一監督が、辻村深月のベストセラー小説の映像化に挑んだ
原恵一監督が、辻村深月のベストセラー小説の映像化に挑んだ[c]2022「かがみの孤城」製作委員会

学校で居場所をなくし、部屋に閉じこもっていた中学生のこころが、見ず知らずの中学生6人と一緒に“鏡の中の城”で経験する出来事を描く本作。1000人超えのオーディションで選ばれた當真あみが、主人公のこころを演じた。

――まず原監督が、原作を読んで心を動かされた点について教えてください。

原「辻村さんの原作はとてもおもしろく読んだのですが、僕は以前『カラフル』という中学生の命の問題を扱うアニメを撮っていたので、それと印象のかぶる作品になってしまわないだろうかという心配があって。それをProduction I.Gの石川光久さんに相談したところ、『これは絶対にやったほうがいいよ』と言っていただいて、背中を押されました。中学生の悩みを描くというテーマは、時代を超えて届くものだと思うんです。ただ問題は、作る側の僕がどんどん歳をとっていくということ。いつでもベストなものを作りたいと思っていますが、いま63歳になって中学生の物語を描くとしたら、登場人物たちとのギャップが生まれてしまうかもしれない。『大丈夫かな』と気にしていましたが、絵コンテを描き始めたら、そんなことはまったく忘れて没頭していました。自分で言うのもなんですが、『俺、まだ大丈夫だな』と思いました(笑)」

【写真を見る】原監督と辻村が、先人のものづくりへの想いを受け継いだ力作『かがみの孤城』
【写真を見る】原監督と辻村が、先人のものづくりへの想いを受け継いだ力作『かがみの孤城』[c]2022「かがみの孤城」製作委員会


――辻村さんは、多感な時期に原監督の作品から影響を受けたそうです。

辻村「そうなんです。特に原さんがチーフディレクターをされていた『エスパー魔美』が大好きで、繰り返し観ていましたし、大人になってからもふと思いだすことがよくあったんです。原監督はあの作品を、『超能力は出てくるけど、ちょっとドジでおせっかいなところのある魔美の日常の物語である』という描き方を崩すことがなくて、そういった世界観にとても感銘を受けました。

また『カラフル』も、本当にすばらしかったですね。森絵都さんの原作小説も大好きで読んでいましたが、原監督のアニメ映画を観て、もう一度『カラフル』に出会い直したような感覚がありました。日常とファンタジーの世界の両方を地続きのものとしてここまで描けるのは、やはり原監督作品だ、と。なので、企画書に原監督のお名前があった時には、すぐに編集者に『このお話は絶対に受けなきゃいけない!』と電話をして、『かがみの孤城』を書く時だけではなく、どれほど私が原監督から影響を受けてきたのかを熱弁しました(笑)」

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