ジェームズ・キャメロンが語る、『タイタニック』考察飛び交うラストシーンの“答え”
「フィルムメーカーとしての直感や美的感覚は、いまも変わっていない」
『タイタニック』から12年後に『アバター』(09)を発表したキャメロン監督は、『アバター:ウェイ・オブ・ウォーター』に続く「アバター」シリーズの3作目の撮影をすでに終え、2022年秋には4作目の撮影もスタートさせた。常に新しい技術を取り入れ、映画界に革命をもたらしてきたキャメロン監督。海外の記者から「もしいまの時代に『タイタニック』を作るなら、違う作品になっていたと思いますか?」と問われると、首を横に振る。
「そうは思いません。私のフィルムメーカーとしての直感や美的感覚は、いまも25年前と変わっていません。仮に制作実現まで25年の歳月がかかっていたとして、ようやく当時の脚本にゴーサインが出たとします。それでも私は同じ脚本のまま、ラブストーリーとして撮影することでしょう。ただ、技術の面では全然違います。いまならばもっとCGを使い、セットも群衆もCG で作るはずです。アプローチは異なりますが、結果は同じ作品になっていると思います」。
「愛する人と一緒に映画館に行き、一緒に体験する」
そして最後に、初公開から25年経ったいま、『タイタニック』を映画館で観ることの意義を語る。「あれからもう25年が経ちました。当時映画館で観た人は、いつ観たのか、誰とデートして観に行ったかまできっと覚えていることでしょう。当時子どもだった人も、大人になっていた人も、『タイタニック』は私たちを時間と繋げてくれる作品です。いまは家庭のテレビもとても立派になりました。もしかすると25年前ほどテレビと映画館の違いはなくなったといえるかもしれません。
でも映画館で観ることが与えてくれる、大きな違いについて語らせてもらいましょう。ソファから立ち上がり、車に乗って街を横切り、高い駐車場料金を払い、高いチケット代とポップコーン代を払って3時間15分も劇場の椅子にじっと座る。そのあいだ、一時停止はできませんし、スケジュールの都合で何日かに分けて観ることだってできません。観ている間に子どもの食事を作ったり、ピザを頼んだり冷蔵庫からビールを出すこともできません。この旅路に、ずっと同行する以外できないのです。
その間、あなたの感情はずっと高まることでしょう。今回は3Dなので尚更そうだと確信しています。私たちはこの映画のクオリティをアップグレードしました。その3時間を体験して、あのラストがある。みなさんがすでに知っている通り、劇場体験には特別なものがあります。現代ではいつでもなんでも観たい映画を家で観ることができる。でもあえて映画館で観ようとする時、誰かとスケジュールをあわせて観に行く約束をするでしょう。愛する人と一緒に映画館に行き、一緒に体験する。それだけでとても貴重な、分かち合いの体験になるのです。つまり、スクリーンの大きさの問題ではないんです。
この映画が興行的に成功した理由の一つに、リピーターの存在がありました。映画館を出ながら、多くの人が『次は誰を誘おうか』と考えたのです。この映画を誰かにも観てほしい。その人と一緒に自分もまた観たい。それが繰り返されていったから、『タイタニック』はいつ誰と一緒に観たのかを覚えている映画になった。だから私は、『タイタニック』にはいつの時代にも価値があると信じている。きっと10年後、また劇場で再上映され、さらに10年後にもまた上映されるかもしれません。その時には私はこの世にいないでしょうが、同じことが起こるはずです」。
構成・文/久保田 和馬