東出昌大が魂の演技で挑んだ『Winny』から嘘みたいな実話まで、映画で描かれる“天才”たちの劇的な生き様
2000年代に社会問題にまで発展したソフトウェア「Winny」。ピーク時には200万人以上が利用し、革新的とも言われたこのソフトを一人で開発した金子勇の実話を描く『Winny』が3月10日(金)より公開される。類まれなるプログラミングの才能を持つ金子のような、“天才”たちの波乱に満ちた生き様は、これまでも多くの映画で描かれ観客を魅了してきた。そこで本稿では、そんな“天才”たちの実話を描いた作品の数々を紹介していきたい。
まずは『Winny』のあらすじから紹介していこう。開発者の金子勇(東出昌大)はユーザーの間でファイルを共有できるソフト「Winny」を開発し、「2ちゃんねる」に公開する。瞬く間に利用者が増えていく一方で、このソフトを悪用し映画やゲーム、音楽などを違法にアップロードするユーザーが相次ぎ、やがて逮捕者が出る事態に。そして金子も、違法アップロードすることを目的に開発したとされ、著作権法違反幇助の容疑で逮捕されてしまう。金子の弁護を担当することになった壇俊光(三浦貴大)は、圧倒的不利な状況のなか、逮捕の不当性を主張し裁判に挑むことになる。
2000年代に現れた、20年後を見据えた“ネット界の寵児”マーク・ザッカーバーグ
金子が「Winny」を開発した2002年は、高速かつ大容量なインターネット接続サービスである“ブロードバンド”の大幅な普及にともなって日本でのインターネット利用世帯が飛躍的に増加した時期と重なる。著作権侵害の温床として「Winny」は問題視され、さらにはその特性を悪用したウイルスも流行。警察や自衛隊の内部資料や企業の顧客情報、個人所有のファイルなど様々なものが漏洩する事態にまでつながり、大きな社会問題となったことを記憶している人も少なくないだろう。
そんな2000年代前半は、金子のほかにもインターネット界隈で革命をもたらした“時代の寵児”が次々と世に現れた。その一人が、現在まで続くインターネット文化のメインストリームであるSNSを発展させた、「Facebook」の開発者マーク・ザッカーバーグだ。彼の逸話は、デヴィッド・フィンチャー監督がメガホンをとった『ソーシャル・ネットワーク』(10)で描かれている。
2003年秋、ハーバード大学の学生だったマーク(ジェシー・アイゼンバーグ)は失恋の腹いせにハッキングのスキルを駆使して女子学生の顔を格付けするサイトを立ち上げ、大学内で問題視される。しかしそのプログラミング能力に目をつけた先輩ウィンクルボス兄弟(アーミー・ハマー)から学生向けのコミュニティサイトの制作を依頼され、マークは親友のエドゥアルド(アンドリュー・ガーフィールド)と共にそのアイデアを使って独自のSNSサイトを作り上げる。やがて事業を拡大していくマークは、エドゥアルドと衝突。彼から訴訟を提起されるだけでなく、アイデアの盗用を訴えるウィンクルボス兄弟からも訴訟を起こされてしまう。
世界中の若者たちを中心に熱烈な支持を集めたザッカーバーグと、対照的に世間からは犯罪に手を貸したとみなされて逮捕された金子。置かれた境遇は正反対であるが、世紀の発明をしながらも多くのものを失ってしまう苦悩が描かれているという点で『Winny』と『ソーシャル・ネットワーク』は共通している。そして両者の人生には、“時代を先取りした故の苦悩”があることは間違いないだろう。
言わずもがな「Facebook」は現在もなお世界中で使われ続け、金子が開発した「Winny」はBitcoinやNFTなどで使用されているブロックチェーン技術の先駆けとなるなど、どちらも現在のインターネット文化や技術に多大な影響を与えている。