6年ぶりの新作長編がついに刊行!『ドライブ・マイ・カー』など映画で浸りたい村上春樹の世界

コラム

6年ぶりの新作長編がついに刊行!『ドライブ・マイ・カー』など映画で浸りたい村上春樹の世界

カンヌやアカデミー賞を沸かせた!『ドライブ・マイ・カー』

ドライブ・マイ・カー』は様々な事情で女性に去られてしまった男たちをモチーフにした短編小説集「女のいない男たち」に収録された「ドライブ・マイ・カー」、「シェエラザード」、「木野」の3つの小説を組み合わせ、さらに原作に出てきたチェーホフの戯曲「ワーニャ伯父さん」や演劇に関するパートを膨らませることで、新たな物語として完成させた濃密な長編映画。

監督と脚本を手掛けたのは、『偶然と想像』(21)の濱口竜介。第74回カンヌ国際映画祭では、日本映画初となる脚本賞をはじめ、国際映画批評家連盟賞、AFCAE賞、エキュメニカル審査員賞の4冠を達成し、第94回アカデミー賞では国際長編映画賞を受賞。そのほかにも数多くの映画賞を受賞するなど、世界中を熱狂させた。

第94回アカデミー賞で国際長編映画賞を受賞した『ドライブ・マイ・カー』
第94回アカデミー賞で国際長編映画賞を受賞した『ドライブ・マイ・カー』[c]Everett Collection/AFLO

舞台俳優であり演出家の家福は、愛する妻の音と満ち足りた生活を送っていた。しかし、音は秘密を残したまま、ある日、突然亡くなってしまう。2年後、広島での演劇祭に車で向かった家福は、寡黙な専属ドライバーのみさきと出会う。その後、家福は、かつて音から紹介された俳優、高槻の姿をオーディションで見つけるが…。

「ドライブ・マイ・カー」「シェエラザード」「木野」らを収録した「女のいない男たち」
「ドライブ・マイ・カー」「シェエラザード」「木野」らを収録した「女のいない男たち」著/村上春樹 発売中 価格:1,731円 文藝春秋刊

主人公の家福役は、『トニー滝谷』でナレーションを務めた西島秀俊。ドライバーのみさき役は三浦透子。キーパーソンの高槻役に岡田将生。家福の妻、音役を『ノルウェイの森』でレイコ役を演じた霧島れいかが演じている。また、劇中の「ワーニャ伯父さん」の舞台に出演する俳優役では、オーディションで選ばれた海外キャストたちが出演。9つの言語を交えながら、素晴らしいアンサンブルを見せてくれる。


キーパーソンの高槻を演じる岡田将生(『ドライブ・マイ・カー』)
キーパーソンの高槻を演じる岡田将生(『ドライブ・マイ・カー』)[c]Everett Collection/AFLO

大切な人を失った悲しみを、残された人はどう受け止めて、どう生きていけばよいのか。国境を越えて、多くの人の共感を呼ぶ普遍的なテーマを描きながら、映画化にあたっては、それぞれのクリエイターが自在にアプローチすることができる懐の深さと現代性を備えている点が、村上春樹文学の大きな魅力だ。これまでの映画化作品を通して、ハルキ・ワールドの多面的なおもしろさを再確認しつつ、待望の新作を心待ちにしたい。

文/石塚圭子

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