アカデミー賞で世界を魅了した『エブエブ』キー・ホイ・クァン!助演男優賞受賞スピーチ全文&受賞後インタビュー
キー・ホイ・クァン 助演男優賞受賞後インタビュー
「すごいな、私がオスカー像を持ってるなんて。信じられる?とてもシュールです。ここが受賞者が集まる有名なプレスルームなんですね」
――『グーニーズ』や『インディ・ジョーンズ/魔宮の伝説』に出演した際は、ジョナサン・キー・クァンという名前でクレジットされていました。あなたの本名が入ったオスカーを受賞するのはどんな気分ですか?
「子どもの頃は、自分の出生名であるキー・ホイ・クァンと名乗っていました。仕事が厳しくなった頃、マネージャーから『もしかしたら、アメリカ人ぽい名前の方がいいかもしれない』と言われたのを覚えています。 そして、一時期、出生名ではなく、別の名前にしてみようと思ったのは、正気の沙汰ではありませんでした。でも、必死に物事を変えようとしていたのでしょう。だから、3年前に俳優業を再開しようと決めた時、最初にやりたかったのは、出生名に戻すことでした。今夜、アリアナ(・デボース)が封筒を開けて、『キー・ホイ・クァン!』と言うのを聞いた時、本当に特別な瞬間でした。とても感動しました。でも、最初に頭に浮かんだのは、母の姿でした。私がアメリカにいるのは母のおかげであり、私がいい人生を送り、こうした機会を得ているのは母のおかげです。 受賞スピーチで申し上げたように、母は多くの犠牲を払ってくれました。出身地(のベトナム)ではすばらしい生活を送っていたのに、彼女はそれをすべて捨ててしまったのです。だから…私のことを誇りに思ってくれていると願っています」
――以前、インタビューで、最初にウェイモンド役を得た時、家族に話すのをちょっとためらったと話していました。予告編が公開される前日になってようやく、家族に個別に報告したと。今夜、オスカー受賞者となり、この場にいることをどう感じていますか?
「今夜は、ヒューストンにいる大家族の一部の人たちも飛んできてくれて一緒にいます。だから、本当に特別でした。そして、CMの間にスティーヴン・スピルバーグのところに駆け寄ると、彼は大きなハグをしてくれて、『君はもうオスカー俳優だ』と言いました。彼のその言葉を聞いた時、世界が変わったような気がしました。いまでも信じられません」
――もしも、あなたがデータの年齢でこの場所にいるとして、グーニーズの弟たちはあなたになんと声をかけるでしょうか。
「若い自分は、ここに至るまでに経験した苦労を知らないでしょう。彼は子役として、ウォータースライダーを下りる海賊船のセットで、人生を楽しんでいたのだから。 今夜、賞が始まる前にグーニーズの兄弟の一人であるコリー・フェルドマン(マウス役)から電話をもらいました。ケリー・グリーン(アンディ役)とも話しました。今夜は、僕のエンタテインメント弁護士であるジェフ・コーエン(チャンク役)が一緒にいます。観客席にいる彼にお礼を言いたかったんです。僕は彼らのことをとても愛しているし、みんなとても喜んでくれました。ショーン(・アスティン、マイキー役)も連絡をくれました。ジョシュ(・ブローリン、ブランド役)も、マーサ(・プリンプトン、ステフ役)も。私たちはいつも絆で結ばれていて、家族みたいなものです。グーニーズは不滅です!」
――あなたはとてもポジティブな人だという評判です。今夜はあなたのキャリアにおいて非常に重要な瞬間ですが、いかにして謙虚に、自分自身に忠実であり続けることができるのでしょうか?
「それは私が育てられた環境に即しています。だからこそ、私はいつも『自分がどこから来たのかを忘れるな』と言っています。なぜなら、もしそれを忘れてしまったら、謙虚さはすべて消え去ってしまうからです。映画の撮影現場に行くたびに、とても感謝しています。今夜は確かに、こんなことはあり得ないと思っていたことが起きました。でも、謙虚さを決して忘れたくないし、常に自分がいる場所に感謝することが大切だと思います。とても感謝しています。前にも同じことを言ったのを聞いたことがある人もいるかもしれませんが、こんなことはあり得ないと思っていました。とてもクレイジーなことです。突然、パンデミック時に健康保険を失い、仕事に就けなくなった頃のことに想いを馳せることもあります。
さっき誰かにこう聞かれました。『今後の予定は?』。私が知っているのは、明日の朝一番にエージェントに電話するということです。エージェントにはあまり迷惑をかけないようにしてるんだけど。でも、3か月に1回か、6か月に一度彼に電話して、『ねえ、なにか仕事はない?』と聞くんです。 そうすると、いつも同じ答えが返ってきます。『ごめんなさい、いまはなにもないけれど、これからも探し続けます』と。だから、明日の朝エージェントに電話した時、違う答えが返ってくることを期待しています」
文/平井 伊都子