完璧の裏に隠された心の闇『TAR/ター』、超能力を操るサーカス団『フリークスアウト』など週末観るならこの3本!

コラム

完璧の裏に隠された心の闇『TAR/ター』、超能力を操るサーカス団『フリークスアウト』など週末観るならこの3本!

週末に観てほしい映像作品3本を、MOVIE WALKER PRESSに携わる映画ライター陣が(独断と偏見で)紹介します!
週末に観てほしい映像作品3本を、MOVIE WALKER PRESSに携わる映画ライター陣が(独断と偏見で)紹介します!

MOVIE WALKER PRESSスタッフが、いま観てほしい映像作品3本を(独断と偏見で)紹介する連載企画「今週の☆☆☆」。今週は、追い詰められていく女性首席指揮者の苦悩を描いたスリラー、超人的能力を持ったサーカス団がドイツ軍との戦いに挑むバトルアクション、スマホ1台で息子を救うため奔走するシチュエーション・スリラーの、手に汗握る3本。

俳優の役への“憑依“を奇跡レベルで体感させる…『TAR/ター』(公開中)

【写真を見る】アカデミー賞にもノミネートされたケイト・ブランシェットの怪演に飲まれる(『TAR/ター』)
【写真を見る】アカデミー賞にもノミネートされたケイト・ブランシェットの怪演に飲まれる(『TAR/ター』)[c] 2022 FOCUS FEATURES LLC.

なにかの仕事で世界最高峰の地位に就いた人は、どんなプレッシャーがあり、どんな試練に立たされるのか?ここまで生々しく描いた作品も珍しい。ベルリン・フィルで女性として初の首席指揮者となったリディア・ター。その類まれな才能や栄光というポジティブな面とともに、代償から醜悪な裏舞台までゴシップ的に突きつける部分もあり、冒頭こそややゆったりした展開ながら、中盤からは文字どおり一瞬も息がつけない時間が続く。

主演のケイト・ブランシェットはトップ指揮者の動きを完全にマスター。しかも実際に彼女がタクトを振ったオーケストラの音がそのまま映画に使われており、俳優の役への“憑依“を奇跡レベルで体感させる本作。何度か天才指揮者の邪悪な面があらわになる瞬間があるのだが、そのシーンは強烈に脳裏にやきつく。いまなにかと話題の、権力者によるハラスメント問題もスリリングに盛り込まれ、メールやSNSで追い込まれる主人公の姿には、職種を超えて我がことのように感じる人も多いのでは?観終わってもしばらく心の動揺が収まらない。そんな映画体験になるのは間違いない。(映画ライター・斉藤博昭)

マジカルな空気が全体をすっぽり包んだ魅惑の映像…『フリークスアウト』(公開中)

特殊能力を持つ4人のサーカス団が異能力バトルを繰り広げる『フリークスアウト』
特殊能力を持つ4人のサーカス団が異能力バトルを繰り広げる『フリークスアウト』[c] 2020 Goon Films S.r.l. - Lucky Red S.r.l. - Gapbusters S.A.

長篇デビュー作『皆はこう呼んだ、鋼鉄ジーグ』(17)で注目を浴びたガブリエーレ・マイネッティ。第2作となる本作もイタリアのアカデミー賞ことダヴィッド・ディ・ドナテッロ賞で前作と同じ16部門にノミネートされ、うち6部門を受賞(前作はなんと7部門!)。さらにヴェネチア国際映画祭のコンペ部門に選出されるなど、世界的にさらに名を高めた。なるほどそれも納得、世界観は壮大になり、バトルアクションも迫力かつ魅力的で、人間ドラマ部分と上手く絡み合ってワクワクさせる。

“特殊能力を持つサーカス団員4人が、ナチス・ドイツに闘いを挑む“と聞くと、「X-MEN」シリーズや「ファンタスティック・フォー」シリーズ、あるいは『アイアン・スカイ』(12)など様々な作品が思い浮かぶ。しかし、そのどれとも違う、アングラ感に満ちた独自の世界観を獲得している。近いのは見世物小屋の色濃い人間ドラマがベースの『ナイトメア・アリー』(22)だが、本作はヨーロッパの古い絵本のような手触りや趣で、少女が主人公だけにもっともっと純な気持ちが苛烈さを生み、人生への迷いや苦悩も痛々しく、団員や団長との絆も心を熱くする。4人4種の特殊能力も面白く、ラスト、光と電気を操る少女の力が、悪の権化のサディスティックな変態ナチ男に向けて放たれる瞬間が、なんとも痛快で感動的。マジカルな空気が全体をすっぽり包んだ魅惑の映像、その中で繰り広げられる壮絶なバトル、底に流れる熱い思いに陶酔させられる!(ライター・折田千鶴子)


参加型としても楽しめる一本…『デスパレート・ラン』(公開中)

愛する息子を守るためスマホを駆使して立てこもり事件の解決に挑む『デスパレート・ラン』
愛する息子を守るためスマホを駆使して立てこもり事件の解決に挑む『デスパレート・ラン』[c]2021 LAKEWOOD FILM LLC. ALL RIGHTS RESERVED.

いまや生活に欠かせないライフラインとなったスマホ。本作はそんな身近なツールによって展開するナオミ・ワッツ主演のサスペンスだ。子供を学校に送りだし自宅から8キロ離れた森にジョギングに出たエイミー(ナオミ)のスマホに、息子の通う学校で銃を持った犯人の立てこもり事件が起きたと緊急速報が届く。エイミーが息子の学校に向かう姿を追う本作、見どころは彼女のスマホ術である。

音楽や会話、情報検索はもちろん、ARによる最短ルート割り出しから三者通話、様々な情報を組み合わせて犯人像をあぶり出すなど、音声アシストを駆使した使いこなしはお見事だ。ほぼ全編がスマホを手にしたワッツの一人舞台だが、疑心暗鬼やケガ、バッテリー切れ、犯人へのアクセスなど次から次にイベントを仕掛け、ぐいぐい引っぱる演出も光る。「こんな使い方あるんだ」、「自分ならこっちのアプリ使うな」など参加型としても楽しめる一本だ。(映画ライター・神武団四郎)

映画を観たいけれど、どの作品を選べばいいかわからない…という人は、ぜひこのレビューを参考にお気に入りの1本を見つけてみて。

構成/サンクレイオ翼

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