“本気”のボクシングシーンに魅せられる!横浜流星、窪田正孝が『春に散る』で挑んだリアル
格闘技をリスペクトする横浜流星が選んだ“プロボクサー”としての説得力
極真空手の使い手として過去には世界一に輝いたこともある横浜流星。これまでも数々の映画やドラマでその卓越した身体能力の高さを披露しているが、キックボクサーとして華麗なるアクションを見せてくれたのが吉高由里子とW主演を務めた『きみの瞳(め)が問いかけている』(20)だ。
2011年の韓国映画『ただ君だけ』をベースとする本作は、事故で視力と家族を亡くした女性と過去の過ちで夢を諦めた男性の運命的な出会いを描いたラブストーリー。横浜が演じたのは、駐車場の管理人として働くことになった元キックボクサーの篠崎塁だ。将来を有望視されていたというこの格闘家を演じるため、撮影の1か月前からキックボクシングのパンチや蹴りをいちからみっちりとトレーニング。時には熱がある状態で激しい格闘シーンをやり遂げ、撮り直しにも文句ひとつ言わず応じたという。体脂肪率5%まで絞り込んだ肉体から繰り出される打点の高いハイキックは絶品。正規の試合からアングラ試合まで、スピーディでアクロバティックなアクションに見惚れてしまうこと請け合いだ。
そんな作品のためには努力を惜しまない横浜が、『春に散る』ではさらなるストイックさでボクシングと向き合っている。佐藤は劇中の仁一と翔吾のミット打ちのトレーニングを振り返り、横浜の完成度を「この男(横浜)のパンチが重くてね」と表現しているが、命をかけて闘う格闘家のオーラをまとってリングに立つ佇まいはプロの選手そのもの。その躍動感に満ちた彫刻のような肉体美が、過酷な鍛錬の賜物であることは素人の目にも明らかだろう。
本作のボクシングシーンを指導&監修したのは、近年話題のボクシング映画にこの人ありの松浦慎一郎。菅田将暉とヤン・イクチュンのW主演作『あゝ、荒野 前篇/後篇』(17)や松山ケンイチがボクシングを深く愛しながらも勝てないボクサーに扮した『BLUE ブルー』(21)、岸井ゆきのに日本アカデミー賞最優秀主演女優賞をもたらした『ケイコ 目を澄ませて』(22)などにも関わり、本作では翔吾のトレーナー役としても出演した。
この松浦に、横浜は撮影前のトレーニング段階で「今まで松浦さんが作ったことのないボクシングシーンにしてください。そして、プロから見てカットでごまかしていると思われないようにしてください」と頼んだという。このような強い覚悟で臨んだ横浜が、その演技に説得力を持たせるために選んだのがプロボクシングC級ライセンス取得だ。なんと受験したのは撮影終了後だったというが、役づくりを超えたこの挑戦は格闘家への敬意を示すとともに、「作品にかける思いを証明したかった」ためだという。