4Kでこそ観たい!作品のエッセンスが込められた「007」シリーズのおしゃれすぎる“タイトル・シークエンス”
英国秘密情報部のエージェント、ジェームズ・ボンドの活躍を描く「007」シリーズ。今年は「007」の日本上陸60周年ということで『007/ノー・タイム・トゥ・ダイ』(21)まで、全25作から選りすぐりの10作が「BOND60 007」として4Kレストア版で順次公開されている。
せっかくの4Kレストア版で観るならぜひ注目してほしいのが、大物歌手による主題歌と影絵のようなおしゃれな映像が融合した、惚れ惚れしてしまうようなタイトル・シークエンスの数々。ここではその魅力や変遷に迫っていきたい。
巨匠モーリス・ビンダーを生みだした“ガンバレル・シークエンス”
記念すべき第1作『007/ドクター・ノオ』(62)から第16作『007/消されたライセンス』(89)まで(第2、3作を除く)のタイトルシークエンスを担当したのがモーリス・ビンダーだ。当時ソール・バスと並び絶大な人気を誇ったデザイナーで、鮮やかな色使いが特徴的な『シャレード』(63)など数多くの映画のタイトルデザインを手掛けた。
銃口に捉えられたボンドが振り向き様に早撃ちを決めると画面上部から血が流れるという、シリーズ伝統のガンバレル・シークエンスもビンダーによる仕事。このガンバレル・シークエンスから続く『ドクター・ノオ』のオープニングでは銃口がカラフルなドット模様へと変わり、さらにドットが「Dr.No」という文字に変わっていくモダンなもの。さらにカラフルなダンスのシルエットなど、ビンダーらしさが存分に発揮された名作だった。
ロバート・ブラウンジョンにより女性のシルエットを映しだすスタイルが確立!
タイトル・シークエンスのお決まりの一つが、女性のシルエットが映しだされるということ。第2作『007/ロシアより愛をこめて』(63)では女性の体に直接クレジットが投影され、動きに合わせて文字が揺れる扇情的な雰囲気がいかにも「007」らしい。
『ロシアより愛を込めて』のオープニングはビンダーの弟子のデザイナー、ロバート・ブラウンジョンが手掛けており、同じく彼による『007/ゴールドフィンガー』(64)では、金ピカ女性のシルエットに劇中の映像を投影。作品のエッセンスを色濃く反映したスタイルへと進化している。
さらにビンダーへと戻った『007/サンダーボール作戦』(65)では、女性の姿は完全にシルエットとなり、影絵のような独特のスタイルが確立されることになった。
様々な映像的工夫が凝らされた作品たち
日本を舞台にした『007は二度死ぬ』(67)では火山の映像をバックに和傘や高島田ヘアの女性のシルエットが登場し、より作品の中身をフィーチャー。また『女王陛下の007』(69)では、2代目ボンドに代わったこともあってか、過去作のボンドガールや悪役たちが砂時計のシルエットに映しだされるという総集編的なものだった。
ポール・マッカートニー&ウイングスによるポップな主題歌も印象的な『007/死ぬのは奴らだ』(73)では、女性の顔がいきなりガイコツになるなど、ブードゥーの秘術をイメージした不気味な雰囲気を放ち、楽曲、映像共にこれまでの優美路線から大きくチェンジ。
その後も『007/私を愛したスパイ』(77)では、ボンド役のロジャー・ムーアががっつりと登場したり、『007/ユア・アイズ・オンリー』(81)では主題歌を歌うシーナ・イーストンの顔が大きく映しだされた、いかにも1980年代らしいMV風になったりと、細かな工夫が凝らされてきた。