“物語”のはじまりを描く『傷物語 -こよみヴァンプ-』…知っておきたい、怪異と出会ったヒロイン総まとめ
春休みに吸血鬼を救った男、阿良々木暦
『傷物語 -こよみヴァンプ-』のタイトルロールであり、「物語」シリーズの主人公。直江津高校3年生で、キスショットとの出来事まで、クラスメイトたちとは深い関わりは持たず、1年生の時に起きたとある出来事から、ニヒルな皮肉屋として周辺と関わっていた。両親は共に警察官で、数学がずば抜けて得意。高校では落ちこぼれとなった彼が、数学だけはトップの成績を誇ったことが、上記の「1年生の時に起きたとある出来事」を引き起こしている。
一見飄々とした性格のように見えるが、困っている人を見捨てられない性格。この見捨てられない性格や、強すぎる自己犠牲精神が「傷物語」の出来事の始まりと言えるだろう。また、「傷物語」で吸血鬼化して以降は、並外れた回復力と身体能力を理由にいっそう自己犠牲精神が増してしまい、人知れず敵に立ち向かおうとする場面も多々。そんな心優しい性格を備えているものの、関わった人物全員に同じだけの優しさを向ける八方美人的な部分もあり、羽川や千石のようにその優しさが祟って怪異を引き起こしてしまう場合もある。それが彼の欠点とも、魅力とも言っていいだろう。
また、八九寺や神原に対しては変態的な面を露わにするなど思春期らしい貪欲さもしばしば表し、ひたぎがいながら、先述の2人にはそれぞれ「結婚しよう」と告白(?)している。そんな気が多いように見える暦だが、ひたぎへの想いは本物であり、ひたぎの暦への想いも本物だ。最初は歪だった2人の関係も、物語が進むにつれ、信用し合い、愛し合っていることが画面越しにもよく伝わってくる。ひたぎが過去と決別しようと詐欺師と対峙するエピソードでの2人のやり取りからは、関係性がグッと近づくのが見て取れ、こちらまでときめかされてしまう。
『傷物語 -こよみヴァンプ-』では、初対面であったはずのキスショットに命を捧げた彼の優しさと、その後の奔走、解決に至るまで、阿良々木暦という人物の魅力を一気に楽しむことができる。
美しき怪異の王、キスショット・アセロラオリオン・ハートアンダーブレード
「化物語」では、8歳程度の幼女、忍野忍として登場するキスショット。2016年の三部作に記された「鉄血篇」、「熱血篇」、「冷血篇」という名前は、彼女を表す「鉄血で熱血で冷血の吸血鬼」という言葉に由来している。元々は人間であり、「うつくし姫」と称されるほどの美貌の持ち主であった。しかし、この美貌をめぐり多くの人々が命を落とすことに。そんな状況に耐えられずに始めた旅の途中に出会った吸血鬼、スーサイドマスターの眷属となり吸血鬼化。実年齢はおよそ600歳となる。
最盛期には「怪異の王」と呼ばれており、怪異のなかでも最強クラス。異常なまでの再生能力を持つほか、本来吸血鬼が持つべき弱点すらも克服しているという。しかし、「傷物語」での出来事以降は、その力はなくなり「吸血鬼の残りカス」とも言われるほど弱体化。定期的に暦の血液を吸わないと消滅してしまうため、暦の影のなかに潜みながら時折吸血することで命を維持している。
そんな最強のキスショットだが、幼女姿の忍の時には意外にもお茶目でどこか子どもっぽい面が目立つのがかわいらしい。高飛車で態度も大きいが、実はナイーブな心の持ち主で、執拗な煽りを受けた際には、目を潤ませてたじろぎ、見かねた暦にフォローされると、今度はたちまち椅子にどっかりと腰をかけてうれしそうに頬を赤くしていた。また、ミスタードーナツのゴールデンチョコレートをこよなく愛しており、暦となにか約束をした時に見返りとしてゴールデンチョコレートを希望する場面も。怪異を食う怪異であることから「怪異殺し」とも言われる彼女だが、忍の時にはチャーミングな面もたくさんあり、きっとそのギャップに心を奪われてしまうだろう。
怪異を巡る「物語」のはじまりに触れる『傷物語 -こよみヴァンプ-』
「化物語」以降、怪異や、怪異ではないなにかを巡るいくつもの出来事と対峙していく阿良々木暦。そもそもなぜ彼が怪異と関わるようになったのか、どのように怪異と出会ったのか、そして、どうして吸血鬼となってしまったのか。シリーズのはじまりを再び1本の劇場アニメとして描く『傷物語 -こよみヴァンプ-』で、「物語」の原点に触れてみてはいかがだろうか。
文/佐藤来海