クリエイティブを尊重し、秀作を次々発表するA24。記録更新のヒット『TALK TO ME/トーク・トゥ・ミー』へ連なる功績
A24がほれ込んだのも納得。『TALK TO ME/トーク・トゥ・ミー』の先鋭性
『TALK TO ME/トーク・トゥ・ミー』の主人公は、母と死別した悲しみを引きずっている女子高校生ミア(ソフィー・ワイルド)。彼女は気晴らしにSNS上で話題になっている、“憑依”チャレンジに参加する。それは呪物の“手”と握手して、“トーク・トゥ・ミー(話したまえ)”と唱えると、亡くなった人間の霊が憑依するというもの。クラスメイトに囲まれ、半信半疑で試したミアは、この霊的な体験に言い知れぬ興奮を覚えた。級友たちも同様で、憑依コミュニティは異様な盛り上がりを見せる。ところが、親友の弟にミアの母を名乗る霊が取り憑いたことから、このチャレンジは危険な色を帯び始める。
監督を務めたダニー・フィリッポウとマイケル・フィリッポウは31歳の双子監督。約10年前に開設したYouTubeチャンネル「RackaRacka」は世界的な人気を博し、登録者数682万人(2023年12月15日現在)を抱えている。だがいかに人気YouTuberといえども映画に進出したところで秀作が撮れるとは限らないし、映画業界にはYouTuberを下に見る慣習もはびこっている。しかし、フィリッポウ兄弟は配信番組では決して描けない、“映画”を撮りたいと願い続けていた。
『TALK TO ME/トーク・トゥ・ミー』を観れば、A24がほれ込んだ、彼らの映画製作への本気度を受け止めることができるに違いない。SNS世代が感じている孤独感を背景に、愛する者に“触れる”ことができない少女の苦悶が物語を動かしていく。“触れる”という行為の意味、そして他人とつながることの意味の問いかけを、本作はホラーというジャンルのなかに落とし込んでいるのだ。
本作の成功を受け、兄弟はA24の製作下で続編『Talk 2 Me』の制作を進行中。さらに、人気ゲーム「ストリートファイター」の最新実写映画化プロジェクトにも抜擢された。A24は現在も新たな才能を発掘し続けているが、まずはその急先鋒であるフィリッポウ兄弟の『TALK TO ME/トーク・トゥ・ミー』を見逃すべからず!
文/有馬楽