「仮面ライダーフォーゼ」から『キングダム』に至るまで―30歳を迎えた俳優、吉沢亮の快進撃を振り返る
原作ファンも大満足!人気キャラを完璧なまでに再現
少女コミック原作のラブストーリーでもイメージを裏切らない完璧なルックス。少年コミック原作のアクションを再現できる高い身体能力。彼の魅力を存分に味わえるのが、男女共に絶大な支持を集める「銀魂」、「キングダム」、「東京リベンジャーズ」といった超人気原作の実写映画シリーズといえる。江戸の治安を守る、どこから見てもイケメンの真選組一番隊隊長、沖田総悟。中華の統一という果てしない野望を抱く秦国の若き王、嬴政。鬼のような強さを誇る「東京卍會」の総長マイキー。どの作品でも抜群のカリスマ性で人をまとめ上げる、周囲が畏怖する役どころが板についている。
自らをインドア派、暗い人間と自己分析する吉沢だが、誰よりも研究熱心で、趣味が漫画というほど原作への愛が深い。役柄の負の感情にも厭わず寄り添い、彼が演じることで、悲しみや憎しみ、怒り…様々な感情がないまぜになったキャラクターの複雑なバックグラウンドを感じずにはいられない。原作をなぞるのではなく、より味わい深く堪能させる表現力こそ吉沢の強み。突き進むヒーローを生かす、影の主役、裏の主役。いるだけで作品の厚みは格段に変わってくる。「仮面ライダーフォーゼ」以来、築いてきた道はいつしか”無敵”になっていた。
そして平成生まれ初の大河ドラマ主演俳優に大抜擢
いい意味で裏切られたのが大河ドラマ「青天を衝け」だ。幕末から明治という時代の変遷に翻弄されながら、高い志で未来を切り拓いていく渋沢栄一に扮した。歴代の大河主演俳優と比べ、若すぎるという不安の声もあったが、蓋を開けてみると、”近代史は当たらない”とされる大河ドラマで安定した視聴率を保持。この作品で吉沢はさらなる高みへと駆け上る。新一万円札の顔として知られる渋沢栄一との見た目の差はもとより、栄一はこれまで吉沢が演じてきた役と違い、転んでも立ち上がる、泥臭いほどにまっすぐな主人公。方言丸出しの人間らしい栄一をのびのびと演じる吉沢の姿に、多くの人が魅了された。
下手をすれば、親しみやすさを抱かれにくい、整いすぎたビジュアルも彼にとってはもはや個性の一つ。振り返ると、出演作の数も、高まりすぎる期待へのプレッシャーや重責も尋常ではなかったろう20代の吉沢。自分を追い込む作品をあえて選ぶ姿勢に毎回、驚かされてきた。果たして、30代ではどんな挑戦が待っているのか。今後もますます目が離せない。
文/高山亜紀
※山崎賢人の「崎」は「たつさき」が正式表記