ソン・ジュンギが新鋭俳優とぶつかり合う!現代社会の悲惨をえぐる韓国ノワール『このろくでもない世界で』|最新の映画ニュースならMOVIE WALKER PRESS
ソン・ジュンギが新鋭俳優とぶつかり合う!現代社会の悲惨をえぐる韓国ノワール『このろくでもない世界で』

コラム

ソン・ジュンギが新鋭俳優とぶつかり合う!現代社会の悲惨をえぐる韓国ノワール『このろくでもない世界で』

数々の個性的な作品が生まれてきた韓国ノワール。俳優の肉体と魂がリアルにぶつかる『このろくでもない世界で』が、7月26日(金)に公開される。

荒涼とした日常で生きる少年と裏社会の孤独な男が出逢う『このろくでもない世界で』
荒涼とした日常で生きる少年と裏社会の孤独な男が出逢う『このろくでもない世界で』[c]2023 PLUS M ENTERTAINMENT, SANAI PICTURES, HiSTORY ALL RIGHTS RESERVED.

継父のDVに怯えるヨンギュ(ホン・サビン)は、義理の妹ハヤン(キム・ヒョンソ)を守るために暴力沙汰を起こして高校を停学、その上、示談金を求められる。生き抜く術のないヨンギュは、地元の犯罪組織のリーダー、チゴン(ソン・ジュンギ)の門戶を叩くほかなかった。仕事という名の“盗み”を働き、徐々にチゴンに認められていくが、ある日、組織の非情な掟に背いてしまう。

既存のイメージをアップデートしたソン・ジュンギの新境地

犯罪組織で若いメンバーを仕切るリーダー、チゴン役を務めたのはソン・ジュンギ。Netflix映画『スペース・スウィーパーズ』(21)、ドラマ「財閥家の末息子~Reborn Rich~」などの立役者として、確固たる人気を誇るトップスターだ。年齢を感じさせない若々しい顔立ちと落ち着いた中低音ボイスのギャップでファンを惹きつけてきた彼が、イメージをアップデートさせるべくキャリアで初めて本格的にアウトロー役に挑む。薄汚れた肌に残る傷跡、虚無感を湛えた眼差し、スリムな体つきに漲る切迫感、持ち前の声色をさらに低くした初登場シーンからオーラを放つ。冷酷な現実を必死にサバイブしてきたチガンは、自分と同じような傷を抱えて生きるヨンギュに気づき、手を差し伸べようとする。

【写真を見る】冷酷な現実を生きる組織の中堅的ボス、チゴンに変貌したソン・ジュンギ
【写真を見る】冷酷な現実を生きる組織の中堅的ボス、チゴンに変貌したソン・ジュンギ[c]2023 PLUS M ENTERTAINMENT, SANAI PICTURES, HiSTORY ALL RIGHTS RESERVED.

フィジカルトレーニングやディテールの凝ったメイクも含め、ソン・ジュンギは本心がうかがい知れない彼を完璧に演じ、前作とは異なる魅力的なキャラクターを作り上げた。驚くことに、シナリオに惚れ込んだ彼はノーギャラで出演したそうだ。共同製作者としてもクレジットされているほど、作品に大きな愛情を寄せている。「いままでとは違う演技を見せるため、いろいろと試してみた」と明かすソン・ジュンギに、キム・チャンフン監督も「これまでの優しいイメージとは全く違うクールさを引き出したかった。 まさにチゴンそのもの」とディテールにこだわり完成度の高いキャラクターを作り上げた。

背中と耳の痛々しい傷が持つチゴンの過去とは
背中と耳の痛々しい傷が持つチゴンの過去とは[c]2023 PLUS M ENTERTAINMENT, SANAI PICTURES, HiSTORY ALL RIGHTS RESERVED.

複雑な内面を持つ少年ヨンギュを力演したホン・サビン

本作が映画主演デビューとなる2人の俳優にも注目したい。ホン・サビンは、所属事務所の代表ファン・ジョンミンがソン・ジュンギに「サビンをよろしく!」とメッセージを送ったエピソードが示す通り、愛され系の若手俳優だ。あの大ヒットドラマ「ムービング」への出演経験もあるが、この役を勝ち取るまでに三度のオーディションを経たというほど並々ならぬ意欲を持って臨んだ。

義父に殴られた顔の傷が、苦境に耐えるヨンギュの悲壮感を一層を感じさせる
義父に殴られた顔の傷が、苦境に耐えるヨンギュの悲壮感を一層を感じさせる[c]2023 PLUS M ENTERTAINMENT, SANAI PICTURES, HiSTORY ALL RIGHTS RESERVED.

ヨンギュは、地獄のような世界の中で母親とオランダに行くことを唯一の希望として生きる少年で、悲惨な現実を乗り越えるためになすすべなく変わっていく。ホン・サビンは、揺れ動く少年の儚さから生きるために他人を踏みにじる卑劣な表情まで、複雑な内面を繊細かつ説得力を持って体現した。キャスティングの初期から「第一印象から強烈で、ヨンギュのようだと思った」と明かしたキム・チャンフン監督は、「いつも想像を超える演技を見せてくれて頼もしかった」と貫禄を見せた新人に太鼓判を押す。ホン・サビン本人も「俳優の方々、みなさん激しく悩みながら撮影した」と振り返るように、大胆かつエネルギーあふれる演技を披露する。

本作で“韓国のゴールデングローブ賞”の新人女優賞獲得!期待の新人キム・ヒョンソ

そしてキム・ヒョンソは、音声ファイル共有サービス「Sound Cloud」に自ら投稿した楽曲が著名なミュージシャンの目に留まり、歌手BIBIとして芸能界デビューした。演技経験は少ないながら、ドラマ初出演となった「最悪の悪」でも中国麻薬工場の重役を演じるなど、すでに存在感が注目されていた。キム・ヒョンソが演じたハヤンは、再婚した父親を追いヨンギュの義理の妹になる。いつもぶっきらぼうな表情で、口が悪くヨンギュら家族にも反抗的な態度を取るが、実は誰よりも兄想い。激しい競争率のオーディションを突破して抜擢されたキム・ヒョンソは、悲惨な現実の前でも揺るがない信念の強さや堂々としたハヤンと完璧にシンクロ。5月に行われた百想芸術大賞で、見事映画部門新人女優賞を獲得した。

強靱な性格のハヤンはチゴンにも屈しない
強靱な性格のハヤンはチゴンにも屈しない[c]2023 PLUS M ENTERTAINMENT, SANAI PICTURES, HiSTORY ALL RIGHTS RESERVED.

キム・ヒョンソにとってハヤンは「真っ直ぐさを失わず、ヨンギュを最後まで考えてくれる人物」だという。彼女の解釈が加わったことで、「今回は果たしてどのような演技なのか?毎回とても楽しみだった」とキム・チャンフン監督が感心するほどのキャラクターに完成した。普段は明るく快活で、昨年の青龍映画賞では祝賀公演のNewjeansに大はしゃぎする飾らない素顔のキム・ヒョンソ。「一歩大人に成長できた」と振り返る本作を経て歌手のみならず役者としての才能も開眼したキム・ヒョンソに、今から注目しておきたい。

ドラマ「熱血司祭2」の出演も確定しますます期待がかかるキム・ヒョンソ
ドラマ「熱血司祭2」の出演も確定しますます期待がかかるキム・ヒョンソ[c]2023 PLUS M ENTERTAINMENT, SANAI PICTURES, HiSTORY ALL RIGHTS RESERVED.


こうした新鮮な俳優陣の組み合わせは、強烈なアンサンブルを生み出した。自分に手を差し伸べてくれた、組織のメンバーでありながら自分もボスに仕える身であるチゴンと、彼に出逢い危険な疾走を始めるヨンギュ。そこへ何者にも屈しないハヤンがぶつかっていく。地獄で生き残るためにそれぞれのやり方で奮闘する彼らの演技によるシナジーが、物語をドライブさせている。


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