アリスが現実とも夢ともつかない世界に紛れ込んでいく『邪悪な国のアリス』
同じイギリス映画で日本公開中の『邪悪な国のアリス』は、言わずもがなの「不思議の国のアリス」のホラー化。火事で両親と死別したアリス(リジー・ウィリス)が疎遠だった祖母(ルーラ・レンスカ)に引き取られ、彼女からルイス・キャロルの「不思議の国のアリス」を読み聞かせてもらううちに、現実とも夢ともつかない世界に紛れ込んでいく、という物語。こちらはスプラッター色よりも幻想色が強く、マッドハッターや赤の女王といった原作でおなじみの面々が不気味な存在として描かれる。サイコな恐怖の渦に落ちていくアリスの運命は!?
シンデレラによってお城が鮮血飛び交う地獄絵図と化す『シン・デレラ』
そして、これらに続く新作が『シン・デレラ』。こちらは言うまでもなく「シンデレラ」の凶暴な映画化で、元をたどればこちらもグリム童話。意地悪な継母や姉たちにいじめられる主人公シンデレラ(ケリー・ライアン・サンソン)が、魔法の力を借りてお城で開かれる舞踏会に出かけ、王子と恋に落ちる…という定番ストーリーを踏まえてはいるが、後半は血みどろのバイオレンスに発展。グリム兄弟の原作にもある、ガラスの靴を無理矢理履かせるために足の指を切り落とすという描写も再現された。さらに、ヒロインがここで受けるイジメは犯罪的で、人殺しを強要されるほどの非道さ。さらに悲惨なことに、理想の恋人と思われた王子さえもゲス男だった!クライマックスではシンデレラの怒りが大爆発。その先に待ち受けるのは、阿鼻叫喚の地獄絵図だ…。
ちなみに、『シン・デレラ』を世界配給したITNディストリビューション社は「プー」シリーズの製作会社でもあり、今後も「バンビ」や「ピノキオ」、「ピーター・パン」を闇堕ちさせるばかりか、童話ホラーのユニバース化も考えているとか。夢のある童話の世界を悪夢へと塗り替えていくこの動きに注目しつつ、最恐のプリンセスによる壮絶な復讐劇が展開される『シン・デレラ』の暴走に戦慄してほしい。
文/相馬学