「いままでと違う綾瀬はるか」ファンの声と共に探る不思議なロードムービー『ルート29』に惹かれる理由
「素直な心に触れると心の扉って開いていくんだ」のり子とハルの心の機微を繊細に表現
のり子やハルたちは、いまの日本の社会ではどこか異質な存在としてみなされるかもしれない。一方で、それぞれが悩みや葛藤を持ち、時に生き方を変えてみようとする姿が観客になにか気づきのようなものを与えてくれる。そのような繊細な心の機微を捉える作風は、森井監督ならではとも言える。
「世の中の人が実はみんな少数派なんだ、みたいなところにスポットを当てる、すばらしい監督だと思います」(60代・女性)
「俳優の表情や演技だけでなく、風景や音楽で演出されているのがよかった」(20代・女性)
「ここはこう動くだろうと予想した動きが全部逆に行っていて、蔦を絡ませた植物の蔦をかき分けて素の状態にしたような感じがよかった」(30代・男性)
「『こちらあみ子』に通ずる生命力を感じる演出がすごく好きでした」(30代・男性)
クライマックスに登場する鳥取砂丘では、のり子とハルが並んで座り、海を眺めながらこの旅を通して得られた人とつながることの大切さを確かめ合う。このシーンに言及する感想も数多く見られた。
「最後の砂丘で2人が会話するシーンで、すっかり打ち解け合い、心を許したとわかり、涙が止まりませんでした」(60代・女性)
「自分の幼少時代を思いだしました。人とつながることがすてきだなと思えました」(30代・男性)
「素直な心に触れると心の扉って開いていくんだと思った」(20代・女性)
「セリフを最小限にすることで、間や表情によって心情を描いていると思った」(40代・男性)
「自分の見えている世界の外にもたくさん世界がある」神秘的でファンタジーのような趣も
ハルをはじめ、旅路で次々と現れる人たちは誰もが不思議な空気感を放っており、ある意味では、生きている人ではない?この世のものではない?といった感覚にさせられる。また、車を盗まれたのり子とハルがさまよい歩く森林、カヌーに乗って進む湖はどこか神秘的で現実を描いたロードムービーでありながらファンタジーのような趣もある。そんな世界観も本作の魅力となっている。
「不思議だけど、なぜかほっこりして泣ける映画です。息子や友人に、『いつもは会えない誰かに会いたくなる作品だよ』と、おすすめしたいです」(60代・女性)
「とても不思議で絵画的。静かなのに、次になにが起こるのかというワクワクが止まらなかった。現実なのか夢なのか、わからなくなる心地よさ」(30代・女性)
「子どものころに見ていた視界(だんご虫とか、空想の世界とか)を思いだしました」(20代・女性)
「川のせせらぎ、森のささやき。主人公が森を、道を、土を踏みしめる音。主人公が立ち止まると、私も一緒に立ち止まる、そういう印象の、音のする作品でした」(30代・女性)
「終始、不思議な印象でした。初めての体験でした。詩が原作ということで、とても興味が湧きました。読んでみます」(30代・女性)
「普段の生活や自分の見えている世界の外にもたくさん世界があることを感じられる」(20代・女性)
「最初はすごく不思議でした。ただ、忘れかけている自分の感覚を信じて進めと言われている気がしました」(50代・女性)
綾瀬はるかの新境地に大沢一菜の唯一無二の存在感、原作の世界を見事に表現したノスタルジックでせつない、不思議な味わいのロードムービーとなった『ルート29』。日々の喧騒のなかで生きづらさを抱え、他者との関係に疑問を感じているならば、本作から生きることの気づきが得られるかもしれない。
構成・文/平尾嘉浩