アウトサイダーや犯罪者を描いたアウトロー映画の先駆け『乱暴者』
ロードムービーからアクションまでバイク映画は多岐にわたるが、メインストリームといえば社会のアウトサイダーや犯罪者を描いたアウトロー映画だろう。その先駆けがマーロン・ブランド主演の『乱暴者(あばれもの)』(53)。欲望のままに行動するバイク集団の若者たちを、彼らと取り巻く市民の視点から描いた作品で『ザ・バイクライダーズ』の劇中でも触れられている。
モーターサイクル・ギャング団、ヘルズ・エンジェルスに協力を仰ぎ製作された『ワイルド・エンジェル』
『乱暴者』はモーターサイクル・ギャング団、ヘルズ・エンジェルスを題材にした最初の劇映画だが、彼らに協力を仰ぎ製作されたのがB級映画の帝王ロジャー・コーマンが監督時代に撮った『ワイルド・エンジェル』(66)だ。コーマンは無軌道な彼らを反体制の旗手として映画化。チョッパーに乗るリーダーを演じたピーター・フォンダのイメージは、3年後の『イージー・ライダー』に受け継がれた。
欲望のまま破壊や暴行を繰り返すバイカーたちを描写した『マッドマックス』
暴力が支配する数年後の未来を描き、世界を席巻したのがジョージ・ミラー監督のオーストラリア映画『マッドマックス』(79)。ミラーは欲望のまま破壊や暴行を繰り返すバイカーたちをフィクションとは思えないリアリティで描写した。暴走軍団はシリーズを重ねるごとにスケールアップしていくが、感情の赴くまま凶行を重ねる第1作の不条理な姿はいまだ戦慄を禁じ得ない。
ウィレム・デフォーのバイカー姿がかっこいい!『ストリート・オブ・ファイヤー』&『ラブレス』
『ストリート・オブ・ファイヤー』(84)にはフィクションとしての暴走軍団が登場する。本作のボンバーズは、獲物を求め大群で街に現れては大暴れして根城に戻る西部劇や時代劇の盗賊団のような存在。馬の代わりにハーレーダビッドソンに跨った、ヒーローと様式的な一騎打ちを繰り広げるリーダーをウィレム・デフォーが憎々しげに演じている。デフォーはジェームズ・キャメロン監督の元妻キャスリン・ビグローの『ラブレス』(81)でもバイカー軍団のリーダーを好演。バイクシーンは少ないが、革ジャンにリーゼントでハーレーを操る姿は文句なしにかっこいい。
バイク乗りがコンビで麻薬組織と戦う『ハーレーダビッドソン&マルボロマン』
アウトローのバイク野郎は集団だけではない。『ハーレーダビッドソン&マルボロマン』(91)は、荒くれ者のバイク乗りがコンビで麻薬組織と戦う痛快アクション。バイクチェイスや格闘、ガンアクションと見せ場が満載のハリウッドらしいエンタメ作だ。主演は『ランブルフィッシュ』(83)でもバイク乗りを演じたミッキー・ローク。彼の役名がタイトルのハーレーダビッドソンで、シルバーのカスタムハーレーに乗っている。劇中でバイクをガンガン乗り回すわけではないが、オープニングをはじめバイクシーンはどれも殿堂レベルのかっこよさだ。
CGを駆使したかっ飛びチェイスが「ワイスピ」につながる『トルク』
「ワイルド・スピード」シリーズを製作しているニール・モリッツがプロデュースした『トルク』(04)もバイク野郎がギャングに挑むアクション作。バイクを曲乗りしながら格闘するなど、CGを駆使したかっ飛びチェイスは「ワイスピ」の元祖と言える。
時代の変化に呑まれていくバイカーたちの哀愁を描く大人のバイク映画『ザ・バイクライダーズ』
バイク映画の最新作『ザ・バイクライダーズ』は、実在したシカゴのアウトローズ・モーターサイクル・クラブ(劇中ではヴァンダルズ)の物語。リーダーのジョニー(ハーディ)と弟分である無口なベニー(バトラー)を軸に、変わりゆく時代の変化に呑まれていくバイカーたちの哀愁が描かれる。バトラー、ハーディのほか、マイケル・シャノン、ノーマン・リーダスといった渋いキャスティングや60年代を再現したノスタルジックな世界感、ほろ苦い結末も魅力の本作。これまでの作品とはひと味違う、大人のバイク映画をスクリーンで味わってみてはいかがだろうか。
文/神武団四郎