トラブルに見舞われた第91回アカデミー賞授賞式…アメリカ映画界が世界に示したもの、そして課題とは?
“新しいアカデミー賞”を目指した改革案が映画業界内外からことごとく批判され、問題が1つも解決しないままの開催となった第91回アカデミー賞授賞式。結果的には、昨年比で視聴率が12%アップするという怪我の功名のような結果になった。
今年は司会者を立てない代わりに、50名以上のプレゼンターを招集。通常通り昨年の受賞者から、アジア系代表としてミシェル・ヨーやオークワフィナといった『クレイジー・リッチ!』(18)の出演者、『ボヘミアン・ラプソディ』(18)を紹介するのにふさわしいプレゼンターとして『ウェインズ・ワールド』(92)でヘヴィメタルが大好きな2人組を演じたマイク・マイヤーズとダナ・カーヴィ、そしてテニス選手のセリーナ・ウィリアムズが登壇した。
例年だと司会者の軽妙なトークで始まるオープニングも、今年は助演女優賞のプレゼンターとして登壇した「サタデー・ナイト・ライブ」で人気のコメディアン、エイミー・ポーラー、ティナ・フェイ、マーヤ・ルドルフが、映画芸術科学アカデミーのゴタゴタや、トランプ大統領によるメキシコ国境の壁建設に関するジョークを飛ばしたうえで、賞の発表に入る演出で切り抜けた。Netflixで配信されている音楽フェスの失敗を記録したドキュメンタリー「FYRE: 夢に終わった史上最高のパーティー」をネタにしたトークも最高におもしろかった。
歌曲賞にノミネートされたうちの4曲(『ブラックパンサー』(18)の「All the Stars」はケンドリック・ラマー欠席のため演奏なし)と、作品賞にノミネートされた8作品ゆかりの人々による作品紹介を挟みながら、授賞式は進められた。例年のショーアップされた授賞式に比べ淡々としすぎているとの評価もあったが、作品そのものの力を伝えるシンプルな構成に好感が持てたし、アカデミー賞は芸達者な司会者たちのトークを楽しむ場ではなく、この1年間に公開された映画を祝う場だと再認識させられた。
ブラッドリー・クーパーとレディー・ガガが披露した歌曲賞受賞曲「Shallow」のパフォーマンスには胸を打たれた。昨年の秋口には、オスカーのトップランナーとして祭り上げられたものの、年を越すころにはすっかり失速してしまったキャンペーンを走り抜けた新人監督と新人女優は、深い海中から光の射す浅瀬までようやくたどり着けた。