【今週の☆☆☆】胸キュン映画の撮影現場が地獄と化す!?『ゴーストマスター』、味わい深い秀作『私のちいさなお葬式』など週末観るならこの3本!
Movie Walkerスタッフが、週末に観てほしい映像作品3本を(独断と偏見で)紹介する連載企画。今回は、12月6日(金)から今週末の公開作品を中心にピックアップ。マーティン・スコセッシ&ロバート・デ・ニーロが22年ぶりにタッグを組んだ重厚なドラマや、B級映画オタクの映画愛がモンスター化するホラーコメディ、ロシアのチャーミングなおばあちゃんがポジティブな終活に勤しむヒューマンコメディなど、バラエティあふれる作品ばかり!
息子にナイショで黙々と終活!おばあちゃんの奮闘がかわいい『私のちいさなお葬式』(12月6日公開)
ロシアのちいさな片田舎の村で一人暮らしをする73歳、エレーナが突然、余命宣告を受ける。都会暮らしの忙しい息子に迷惑を掛けまいと、自分の“お葬式計画”に着手する。棺桶を買い、元教え子に協力させ埋葬許可書(死亡診断書がないと普通はもらえない)を手に入れ、墓の穴を掘り。果たしてそれを知った息子は――。
エレーナの服装も素朴でかわいらしく、毒舌を吐き泣きながら手を貸す女友達との友情にもグッとくる。もちろん息子の葛藤や愛にも。このテーマにしてシリアスでもドタバタでもなく、ほっこりさせるヒューマンコメディの味わいが素晴らしい!着々と“終活”を進める、吹き出してしまうほどユーモラスで前向きなエレーナのチャーミングさも大きな要因だが、ウラジーミル・コット監督の手腕は当然、注目すべし。本作が日本公開初だが、過去3作品すべて多数の賞を受賞している逸材だ。(映画ライター・折田千鶴子)
トビー・フーパーもブライアン・デ・パルマも仰天!?ぶっ飛んだストーリーが気づけばジーンときちゃう『ゴーストマスター』(12月6日公開)
名前だけは巨匠監督にそっくりの気弱なダメ助監督・黒沢明が、日々の鬱屈をぶつけて書き上げたホラー映画脚本に悪霊が宿り、壁ドン映画の撮影現場に混乱と恐怖の大渦を巻き起こす。果たして黒沢はモンスター化した主演俳優の怨念を成仏させることができるのか?
愛すべきB級映画へのオマージュが詰まったホラーコメディだが、ハチャメチャなストーリーに翻弄されているうちに、名状しがたいエモさに包まれて感動してしまう怪作。猛烈にクセが強いのでアリかナシかは人によって大きく分かれそうだが、「映画を観たい!」が高じて「映画になりたい!」と訳のわからないことを思ったことがある人には激しくおススメ。(映画ライター・村山章)
マフィアに殺し屋…危ない奴らの友情や裏切りを描くスコセッシの真骨頂『アイリッシュマン』(Netflix配信中)
大ヒット作『ジョーカー』(公開中)にも影響を与えた『タクシードライバー』(76)、『キング・オブ・コメディ』(83)をはじめ、数々の傑作を世に送り出した巨匠マーティン・スコセッシ、名優ロバート・デ・ニーロの黄金コンビが久々に復活。労働組合運動の裏側で暗躍したマフィアのもと、幾多の“汚れ仕事”に関与した実在の殺し屋フランク・シーランの人生を通して、第二次世界大戦後のアメリカ現代史を描き上げた大作だ。
驚くほど多くのキャラクターが登場しては消えて(殺されて)いく複雑怪奇なドラマだが、裏社会に生きる男たちの友情と裏切りをあぶり出す演出、脚本、演技のすべてが絶品で、豊かな哀歓が息づく映像世界は圧巻の見応え。主人公の数十年もの軌跡を演じたデ・ニーロに加え、アル・パチーノ、ジョー・ペシを若返らせた視覚効果も驚異的で、今後の全米賞レースをチェックするうえでも必見の一作だ。(映画ライター・高橋諭治)
週末に映画を観たいけれど、どの作品を選べばいいかわからない…という人は、ぜひこのレビューを参考にお気に入りの1本を見つけてみて!
構成/トライワークス