坂本龍一「フクシマのことを、僕らは忘れてはいけない」明日公開の『Fukushima 50』に著名人の賞賛相次ぐ
日本の観測史上最大となる東日本大震災によって発生した巨大な津波によって危機的事態に直面した福島第一原子力発電所で、自ら犠牲になることもいとわずに戦い続けた作業員たちの姿を描いた『Fukushima 50』(フクシマフィフティ)が、いよいよあす3月6日(金)に公開される。空前の豪華キャストと日本映画史上最大級のスケールで描かれる本作に寄せられた、著名人のコメントを紹介したい。
まずは、「モーニング」で連載されたルポルタージュ漫画「いちえふ 福島第一原子力発電所労働記」の作者、竜田一人。自身も福島第一原子力発電所で作業員として従事した経歴を持つ竜田は「現場の再現度は保証付き。冒頭から余計な前フリ無しに震災の渦中に叩き込まれ、息もつかせず進行していく過酷な事象に、その場で立ち会っているかのような臨場感。決して英雄ではない、普通の人達の映画です」と本作のリアリティに太鼓判を押す。
また脳科学者の茂木健一郎は「災害や事故は時に『人』の予想を超えるが、『人』が力を合わせれば危機を乗り越えられる。世界の注目が集まった緊迫の日々に、現場で踏ん張った『人』たちの勇気を、この傑作群像映画で永久に後世に伝えたい」とコメント。
一方、これまで『日本沈没』(06)や『シン・ゴジラ』(16)など、有事における人間ドラマを数多く描いてきた映画監督の樋口真嗣は「我々は取り返しのつかない過ちを目撃する。無力な人間の判断、行動は怒号と慟哭に終始し、殉難の中に内在する事実にひたすら戦慄するしかない。 そして今、教訓を活かすことなくその過ちは再び繰り返すのだろうか?」と、すべての日本人に向けて問いを投げかける。
そして福島県いわき市出身の声優ブリドカットセーラ恵美は「当時の記憶が一気に蘇り、涙無しには観られませんでした。9年前のあの日、福島で原発事故が起こったという事実。その場所で最後まで守り抜き闘い続けた人々がいたこと、決して忘れません。東日本大震災から10年目を迎えようとしている今、絶対に観るべき作品です」とコメント。
同じく福島県須賀川市出身の俳優、板橋駿谷は「私は"祈り"のある作品が好きです。スクリーンから聞こえる福島訛りを聞く度に『悔しかったっぺなぁ、悔しかったっぺなぁ』と心の中で思いながら涙した。この"祈り"が未来永劫、消えませんように」と語り、いわき市出身のお笑い芸人ゴー☆ジャスも「あの日の原発での出来事を実際に起きた話だからこそみんなに知ってほしい。豪華なキャストだが実際は現場の職員さんが命がけで戦っていたのだと思うと胸が熱くなる。理解してこれからの未来に語り継いでいきたい」と、地元福島県出身者ならではの強い決意を述べた。
ほかにも、読売巨人軍監督の原辰徳は「チームがひとつになった時の力強さを改めて確信した大作でした」と語り、タレントのYOUは「命をさらして日本を守ってくれた彼等の事実を消して忘れてはならないと思いました」。俳優の藤岡弘、は「事実に基づく感動と涙の記録、教訓を後世へ…」とコメントするなど、現時点で30名の著名人から本作へのコメントが寄せられている。これらはすべて、公開記念特設サイト「#フクシマフィフティと311」で確認することができる。
最後は日本を代表する音楽家の坂本龍一から届いたコメントで本稿を締めくくりたい。
「2011年3月のことを、フクシマのことを、僕らは忘れてはいけない。日本人はみな観よう。そしてもう一度思いだそう、原発をもつことがどれだけ愚かなことで、取り返しのつかないリスクを伴うか、ということを。映画中の吉田所長の言葉に深く頷く。『俺たちは自然の力をなめていたんだ。10メートル以上の津波は来ないと、ずっと思い込んでいた、確かな根拠もなく。1Fが出来てから40年以上、自然を支配したつもりになっていた。慢心だ」。
文/久保田 和馬